老人ホームのビジネスモデルを解説│老人ホームの種類・リスクと対処法・開業の流れについて

高齢者が増加するにつれ、老人ホームの開業を検討する人も増えています。ただし、競合が多いだけに、ビジネスモデルを間違えると経営が軌道に乗らないかもしれません。この記事では老人ホームを開業したい人に向け、老人ホームの種類や、ビジネスモデルのリスクと対処法、開業の流れなどを解説します。事業の成功に向けお役立てください。

老人ホームの増加

高齢化社会に伴い、老人ホームが増加しています。「社会福祉施設等調査:結果の概要│厚生労働省」によると、2015年度は10,651施設であった有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅以外)は、2020年には15,956施設まで増加しました。今後も老人ホームは増え続けると考えられ、ビジネス上のチャンスが期待できます。

民間で開業可能な老人ホームとは?

老人ホームは介護施設の一種で、高齢者が安心して永久に暮らせるための住宅を指します。介護施設は介護を受けられる施設全般を指し、老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの入居型の施設の他に通所型・在宅型の施設も含みます。

老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の大きな違いは、契約形態です。老人ホームに入居する人の多くは、生涯住み続けることを前提としています。一方、サービス付き高齢者向け住宅に入居する高齢者は賃貸契約を結んでおり、気軽に住み替えられます。

老人ホームにおけるビジネスモデルの課題

高齢者は増え続けていますが、老人ホームの運営を成功させるためには入念な計画が必要です。上述したとおり、老人ホームの数は急速に増加しており、ライバルに入居者を取られる可能性があります。公的施設に入居したい高齢者も少なくありません。また介護業界は人手不足であり、入居者をサポートできるだけのスタッフを確保できない恐れもあります。

【ビジネスモデル】民間の老人ホームまたは類似施設

民間の老人ホームについて解説します。厳密には老人ホームとは異なりますが、サービス付き高齢者向け住宅とグループホームも紹介します。

1.健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームの対象者は、自立した高齢者です。個人の居室や生活に必要な設備はもちろん、機能訓練室や美容室、談話室、売店、プールなどが備えられた施設もあります。なお健康型有料老人ホームでは、介護レベルが上がった高齢者には退去を促す必要があります。

2.住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは自立した人、介護が必要な人の両方が入居できる施設です。健康型有料老人ホームとの違いは、介護サービスを提供する施設もある点です。ただし、住宅型有料老人ホームが介護を提供するためには、外部の介護サービスと提携しなければなりません。

※参考:特定施設入居者生活介護│厚生労働省

3.介護付有料老人ホーム

介護付有料老人ホームは、都道府県もしくは市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。住宅型有料老人ホームとの違いは、介護サービスを提供する人が、内部スタッフか外部サービスかという点です。

介護付有料老人ホームでは、食事の支度や掃除など簡単なサポートから入浴やトイレの介護、機能訓練など幅広いサポートを受けられます。

※参考:特定施設入居者生活介護│厚生労働省

4.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、基本的に自立した人、介護の心配の低い人が暮らす高齢者向けの施設です。特定施設入居者生活介護の指定を受け、介護サービスを提供する施設もあります。

サービス付き高齢者向け住宅は、老人ホームでは受けられない税制優遇措置や補助金を受けられます。開業資金に不安があれば、サービス付き高齢者向け住宅の運営も検討しましょう。

5.グループホーム

グループホームとは、主に要介護1(一部要支援2)以上の介護認定を受けている認知症の高齢者が、家事などを分担しつつ共同生活を送る施設です。グループホームでは、介護や機能訓練などのサービスを提供します。共同生活を通じて高齢者が精神的な安定を得ると、症状の進行が遅くなる可能性があるといわれています。

老人ホームで得られる収益の種類

老人ホームの運営で得られる収益を解説します。入居者以外に、国民健康保険連合会からも収益を得られます。

1.一時金と月額利用料金

高齢者は、老人ホームに入居する際には一時金を、入居後には月額利用料金を支払います。入居のハードルを下げて高齢者にアピールすべく、近年は入居一時金を不要とする老人ホームも登場しています。

2.介護報酬やサービス利用料金

介護サービスを提供する老人ホームであれば、介護報酬やサービス利用料金をもらえます。介護サービスを提供する際は、特定施設入居者生活介護の指定を受けるか、外部の介護サービスと提携しましょう。特定施設入居者生活介護の指定を受ける方法については、後ほど詳しく解説します。

3.国民健康保険連合会からの報酬

介護報酬は、介護サービスを提供した見返りとして、国民健康保険連合会から支払われます。介護報酬の額は、国の判断で変わる可能性があります。ずっと同じ額を得られるわけではないと理解して、ビジネスモデルを考えましょう。

老人ホームのビジネスモデルにおける3つのリスクと対処法

老人ホームのビジネスモデルには3つのリスクがあります。リスクの詳細と対処法を解説します。

リスク1.入居者が集まらない

せっかく大規模な老人ホームを建築しても、入居者が集まらなければ赤字になってしまいます。周囲のライバルと価格競争で負ける、住み慣れた自宅で生活したいと希望する高齢者に入居を拒まれるなどの理由で入居者が集まらない恐れがあるため気をつけましょう。

また、新型コロナウイルス感染症のまん延をきっかけに、安心できる自宅での生活を望む高齢者も増えています。

入居者を集める方法

早い段階から入居者を募集しましょう。老人ホームの竣工前から説明会を開催し、集客効果を高めてください。新築の老人ホームはイメージがよく、入居者を集めやすいと考えられます。なお、広告手法の一例は、以下のとおりです。

  • ホームページの開設
  • 地域のポータルサイトへの登録
  • 紙のチラシ

リスク2.スタッフが集まらない

高齢者の介護や生活面のサポートを行うスタッフがいなければ、入居者を増やせません。また、スタッフの質も重要です。経験が乏しいスタッフを大量に採用しても、サービスの質で入居者やその家族からクレームがきたり、入居者を危険にさらしたりする恐れがあります。事故などのトラブルを起こして施設のイメージが低下すると、入居者が集まりにくくなります。

スタッフを集める方法

介護業界は人手不足といわれています。そのため、スタッフが応募したくなるような働きやすい環境作りが大切です。また求人を出す際は、仕事内容と求める人材、待遇などを具体的に書くようにしましょう。。老人ホームは、施設間で働き方に差が出やすいためです。

さらに、施設に必要な人材を計画的に検討しましょう。要介護者や要支援者、自立した高齢者の割合を考え、どのようなレベルの人材を何人募集するか見積もってから求人を出してください。

リスク3.入居者の介護レベルの上昇に対応できない

介護付有料老人ホームの場合、入居者の要介護レベルが上がると、スタッフ1人あたりの介護負担が増えます。スタッフの数を増やすとなると、さらに人件費がかかってしまいます。

入居者の介護レベルに対応する方法

スタッフの数を増やしても経営が成り立つように、ビジネスモデルを考えましょう。確かに人件費は増えますが、スタッフの負担を減らすと働きやすくなり、入居者の安全は保たれやすくなります。経費ばかりに注目せず、スタッフと高齢者に配慮して運営に取り組みましょう。

老人ホームを設立する際に必要な基準

住宅型有料老人ホームについては、設備やスタッフに対する法的な決まりはありません。介護付有料老人ホームの場合は、厚生労働省が定める「特定施設入居者生活介護」の設立規定を守る必要があります。開業する老人ホームの介護レベルに応じて、必要な設備やスタッフのスキルや資格を考えましょう。

※参考:特定施設入居者生活介護│厚生労働省

老人ホームを開業する流れ

老人ホームを開業する流れを解説します。成功するビジネスモデルの構築に向け、まずは開業する施設の種類を考えましょう。

1.開業する施設の種類を考える

開業地を決める際は、現時点の高齢者の数に加え、将来的な高齢者の数も予測してください。また開業予定の場所次第で、向いている老人ホームの種類は異なります。上述した老人ホームの種類のなかで、収益が見込めそうな施設を決めましょう。

ただし総量規制の問題で、目的の施設が開業できない場合もあります。施設が開業可能か、事前に自治体に確認してください。

2.市区町村や都道府県と話し合う

老人ホームの開業準備は、自治体ごとに決められた指針に基づき進行します。まずは市区町村や都道府県の担当者と、土地の取得予定や関係しそうな法令、総量規制に抵触しないかなどを話し合います。話し合いが終わったら、老人ホームを建築してよいかを決める審査が行われます。

3.開業・運営資金を準備する

老人ホームは、国の補助金・助成金制度の対象ではありません。ただし、土地の取得費用や建築費、設備・備品、スタッフの求人費、広告費など、老人ホームの開業には多大な資金が必要です。国の補助金・助成金以外の方法を検討し、開業・運営資金を工面しましょう。

具体的には、以下の機関から資金調達できる可能性があります。

  • 日本政策金融公庫
  • 銀行
  • 独立行政法人福祉医療機構(WAM)
  • 各自治体

※参考:ソーシャルビジネス支援資金│日本政策金融公庫
※参考:女性、若者/シニア起業家支援資金│日本政策金融公庫
※参考:WAM助成(社会福祉振興助成事業)│独立行政法人福祉医療機構

4.スタッフや備品の確保をする

老人ホーム開業の審査に通過してから、経営母体となる法人を設立しましょう。続いて、スタッフや備品の確保にも取り組んでください。厚生労働省が公開している特定施設入居者生活介護を参考に、高齢者が安心して入居できる老人ホームを整えていきます。

※参考:特定施設入居者生活介護│厚生労働省

5.必要な届け出を出す

最後に、自治体で定められた届け出を提出します。介護付有料老人ホームを開業する場合は、事業を開始する前々月の末日までに「特定施設入居者生活介護」の指定申請も提出してください。各届け出の詳細な申請のタイミングについては、自治体ごとに確認しましょう。

まとめ

老人ホームのビジネスモデルには、入居者が集まらない、スタッフが集まらない、入居者の介護レベルの上昇に対応できないなどのリスクがあります。リスクへの対策を盛り込みつつ成功するビジネスモデルを考えましょう。老人ホームで働く従業員の勤怠管理や、入居者の入退室管理にはシステムを使うことがおすすめです。

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