「口頭で説明しても、なかなか行動につながらない」「予定が変わると不安になってしまう」「自分の気持ちや希望を言葉で伝えることが難しい」。
放課後等デイサービスでは、このような場面に対する支援方法の一つとして、絵カードを使った視覚支援が行われることがあります。
この記事では、放課後等デイサービスの運営者や職員に向けて、視覚支援における絵カードの役割や種類、具体的な使い方、作り方、活用する際の注意点について解説します。
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視覚支援とは?
視覚支援とは、言葉だけでは理解しにくい情報を、写真・イラスト・文字・記号・実物などを使って視覚的に分かりやすく伝える支援方法です。
発達障害のある人のなかには、耳から入る言葉よりも、目で確認できる情報のほうが理解しやすい場合があります。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターでも、予定表や手順書などを使って視覚的に情報を提示することが、支援上有効な場合があると紹介されています。
例えば、「荷物を片付けて、手を洗って、おやつを食べよう」と口頭で一度に説明されると、途中の内容を忘れてしまう子どももいます。
そこで、
「①荷物を置く」
↓
「②手を洗う」
↓
「③おやつ」
と写真やイラストで示せば、何をどの順番で行えばよいのか確認しながら行動できます。
視覚支援は、子どもを指示どおりに動かすためのものではありません。本人が状況を理解し、自分で選択したり行動したりしやすくするための環境調整の一つと考えることが大切です。
視覚支援に使われる「絵カード」とは?
絵カードとは、行動・物・場所・気持ちなどを、イラストや写真、文字で表したカードです。
例えば、次のようなカードがあります。
| 絵カードの例 | 伝える内容 |
|---|---|
| トイレのイラスト | トイレに行く |
| 手を洗っている写真 | 手洗いをする |
| おやつの写真 | おやつの時間 |
| 公園の写真 | 外遊びに行く |
| 「休憩」のカード | 少し休む |
| 笑顔・泣き顔などのイラスト | 自分の気持ち |
| 「はい」「いいえ」 | 意思表示 |
| 「あと5分」 | 活動終了までの見通し |
カード単体で使うだけでなく、複数のカードをボードに並べてスケジュールや手順表として使用する方法もあります。
子どもによってはイラストより実際の写真のほうが理解しやすかったり、文字だけで十分理解できたりすることもあります。
そのため、「絵カード=イラストを使うもの」と決めつけず、その子どもにとって最も理解しやすい表現方法を選ぶことが重要です。
放課後等デイサービスで絵カードを使うメリット
予定の見通しを持ちやすくなる
放課後等デイサービスでは、来所してから帰宅するまでにさまざまな活動があります。
例えば、
「到着」
↓
「荷物整理」
↓
「宿題」
↓
「おやつ」
↓
「自由遊び」
↓
「帰りの会」
といった一日の流れを絵カードで示しておけば、子ども自身が「次に何をするのか」を確認できます。
特に、予定が分からないことに不安を感じやすい子どもにとって、活動の始まりと終わりを視覚的に確認できることは安心材料の一つになります。
口頭指示だけに頼らず支援できる
口頭で何度も「次は宿題だよ」「片付けてね」と伝えるだけでは、職員・子どもの双方に負担がかかる場合があります。
絵カードがあれば、必要なときに子ども自身がカードを確認できます。
一度伝えた情報が消えてしまう口頭説明とは異なり、視覚情報はその場に残しておけることも大きな特徴です。
行動の手順を理解しやすくなる
複数の工程がある行動にも視覚支援を活用できます。
例えば手洗いであれば、
- 蛇口をひねる
- 手をぬらす
- 石けんをつける
- 手を洗う
- 水で流す
- タオルで拭く
という手順を、写真やイラストで順番に掲示します。
トイレ、着替え、歯磨き、片付け、調理活動など、日常生活動作を身につけるための支援にも活用できます。
自分の気持ちや要求を伝えやすくなる
言葉での意思表示が難しい子どもの場合、「伝えたいことはあるけれど、うまく言葉にできない」という状況が起こることがあります。
その際、
- 水が飲みたい
- トイレに行きたい
- 休みたい
- 手伝ってほしい
- もう一回やりたい
- 嫌だ
- 痛い
といったカードを用意しておくと、指差しやカードの受け渡しによって意思を伝えられる場合があります。
子どもが自分の希望や不快感を表明できる手段を増やすことは、本人の意思を尊重した支援という観点からも重要です。
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインでも、子どもの年齢や発達の程度に応じて意見を表明し、その意見が尊重されることが基本理念として示されています。
予定変更による混乱を減らしやすい
放課後等デイサービスでは、「雨が降ったので公園に行けなくなった」「予定していた職員がお休みになった」「送迎時間が変わった」など、予定変更が発生することもあります。
予定変更が苦手な子どもに対して、「今日は公園に行きません」と口頭で突然伝えるだけでは、状況を受け入れにくいことがあります。
その場合、
「公園」のカードに×印をつける
↓
「室内遊び」のカードを提示する
といったように、変更前と変更後を目で確認できるようにする方法があります。
発達障害情報・支援センターでも、予定変更について視覚的に示す方法が紹介されています。
放課後等デイサービスで使える絵カードの種類

スケジュールを示す絵カード
一日の予定や活動の順番を示すために使用します。
例えば、
- 到着
- 荷物整理
- 宿題
- おやつ
- 集団活動
- 自由時間
- 帰りの会
- 送迎
などです。
ホワイトボードなどにカードを並べ、終了した活動を外していく方法もあります。
「あと何個で帰れるのか」が分かるため、活動終了までの見通しを持つことにも役立ちます。
行動を示す絵カード
子どもにしてほしい行動を視覚的に伝えるカードです。
例えば、
- 座る
- 待つ
- 並ぶ
- 片付ける
- 手を洗う
- 靴を履く
- 静かにする
などがあります。
ただし、「禁止事項」ばかりをカードにするのではなく、具体的にどのような行動をすればよいのかを示すことがポイントです。
例えば「走らない」というカードより、「歩く」というカードのほうが、取るべき行動を理解しやすくなります。
コミュニケーション用の絵カード
子どもが自分の希望を伝えるために使います。
例えば、
- ○○したい
- ○○が欲しい
- 休みたい
- 手伝って
- もう一回
- おしまい
- 分からない
- 嫌です
などです。
職員側から情報を伝えるカードだけでなく、子どもから職員へ意思を伝えるカードを用意することも大切です。
気持ちを表す絵カード
「うれしい」「悲しい」「怒っている」「怖い」「疲れた」など、感情を表すカードです。
自分の気持ちを言葉にすることが難しい場合でも、表情のイラストなどから近いものを選ぶことで、自分の状態を伝えられる場合があります。
ただし、カードに書かれている感情の中から無理に選ばせるのではなく、「どれにも当てはまらない」という選択肢を設けることも重要です。
ルールを示す絵カード
施設内や活動中のルールを伝えるためにも活用できます。
例えば、「順番を待つ」「使ったものを戻す」「人の物を勝手に取らない」などです。
抽象的な表現ではなく、実際にどのような行動をすればよいのかが分かる内容にすると理解しやすくなります。
選択肢を示す絵カード
「今日は何をして遊ぶ?」など、子ども自身に活動を選んでもらう場面にも使えます。
例えば、「ブロック」「お絵描き」「カードゲーム」の3枚を並べ、好きなカードを選んでもらいます。
このような使い方であれば、言葉で希望を伝えることが難しい子どもにも選択の機会を設けやすくなります。
放課後等デイサービスにおける絵カードの活用例
来所後の準備
来所後に行うことを、
「靴を脱ぐ」
↓
「荷物を置く」
↓
「連絡帳を出す」
↓
「手を洗う」
のように順番に掲示します。
毎日同じ場所に掲示することで、自分で確認しながら準備できるようになることもあります。
宿題から遊びへの切り替え
遊びたい気持ちが強く、宿題になかなか取りかかれない場合には、
「宿題」
↓
「好きな遊び」
と2枚のカードを並べる方法があります。
「宿題が終わったら遊べる」という流れを視覚的に分かりやすく示せます。
自由遊びの終了
遊びを突然中断されることが苦手な子どもには、
「あと10分」
↓
「あと5分」
↓
「おしまい」
↓
「片付け」
といったカードとタイマーを組み合わせる方法も考えられます。
活動終了を突然告げるのではなく、事前に予告することで切り替えやすくなる場合があります。
お出かけやイベント
遠足や公園遊び、買い物体験など、普段と異なる活動では、写真付きの予定表を用意する方法があります。
例えば、
「車に乗る」
↓
「公園」
↓
「お弁当」
↓
「遊ぶ」
↓
「車」
↓
「放デイに戻る」
といった流れです。
初めて行く場所であれば、施設や公園の写真を事前に見せておくことで、活動をイメージしやすくなることもあります。
絵カードの作り方
絵カードは特別なソフトがなくても作成できます。
1.カードにする内容を決める
まず、「何を伝えるためのカードなのか」を明確にします。
例えば一日のスケジュールを作るのであれば、
- 宿題
- おやつ
- 自由遊び
- 集団活動
- 帰宅
など、日常的に使う活動から用意するとよいでしょう。
最初から大量のカードを作るのではなく、必要性の高いものから少しずつ増やす方法がおすすめです。
2.写真・イラスト・文字を選ぶ
子どもの理解度に合わせて表現方法を選びます。
例えば、実物とイラストを結びつけることが難しい場合には、実際に使用しているコップやトイレ、施設の写真などを使ったほうが理解しやすいことがあります。
一方、文字を読んで理解できる子どもであれば、文字だけでも十分な場合があります。
3.印刷してカードにする
PowerPointやWord、Canvaなどでも簡単に作成できます。
印刷後は、ラミネート加工する、厚紙に貼る、角を丸くするなどの加工をしておくと、繰り返し使いやすくなります。
4.必要に応じてマグネットや面ファスナーを付ける
ホワイトボードに貼る場合はマグネット、スケジュールボードに付け外しする場合は面ファスナーを使うと便利です。
「終了した活動のカードを自分で外す」など、カードを操作する行為そのものを支援に取り入れることもできます。
絵カードを使用するときのポイント
子ども一人ひとりに合わせる
視覚支援が有効かどうかや、分かりやすい表示方法は子どもによって異なります。
例えば、
- 写真なら理解できる
- イラストのほうが分かりやすい
- 文字だけで理解できる
- カードをたくさん並べると逆に混乱する
など、さまざまです。
「発達障害のある子には絵カードを使えばよい」と一括りにするのではなく、本人の理解の仕方や困りごとを確認したうえで支援方法を検討することが重要です。
発達障害情報・支援センターでも、診断名だけではなく「その人が何を得意とし、何を苦手としているのか」に目を向け、その人に合った支援を行うことの重要性が示されています。
一度に多くの情報を提示しすぎない
視覚化すれば、情報量を増やしてよいわけではありません。
カードを一度に10枚、20枚と並べると、どこを見ればよいのか分からなくなる子どももいます。
必要に応じて「今やること」や「次にやること」だけを提示するなど、情報量を調整しましょう。
カードと実際の行動を一致させる
「おやつ」のカードを見せた直後に別の活動を始めるなど、カードと実際の出来事が一致しない状態が続くと、カードの意味が分かりにくくなります。
特に導入初期は、カードを提示した後に何が起こるのかをできるだけ一貫させることが重要です。
できたらカードを減らすことだけを目標にしない
「いつまでも絵カードを使っていると自立できないのでは」と考えることもあるかもしれません。
しかし、眼鏡やメモ、スマートフォンのカレンダーを大人が活用するのと同じように、視覚支援も本人が生活しやすくするための道具です。
本人がカードを使うことで自分で行動できているのであれば、カードを利用すること自体が自立を妨げているとは限りません。
必要性が低下した場合には徐々に減らすこともできますが、「カードなしでできること」を唯一のゴールにする必要はありません。
「指示するためのカード」だけにしない
視覚支援を取り入れると、「座る」「待つ」「片付ける」など、職員から子どもに指示を出すためのカードが増えがちです。
しかし、それだけでは一方的なコミュニケーションになってしまいます。
「休みたい」「嫌です」「手伝って」「○○したい」など、子ども側から意思表示できるカードも同時に用意することが大切です。
絵カードは無料素材を使ってもいい?
絵カードには、インターネット上で配布されている無料素材を活用する方法もあります。
ただし、素材を利用する際には利用規約を確認しましょう。
特に、
- 商用利用できるか
- 印刷して施設内で利用できるか
- 加工してもよいか
- WebサイトやSNSに掲載してもよいか
などの条件は素材サイトによって異なります。
放課後等デイサービスで日常的に使用するだけでなく、事業所のホームページやSNS、配布資料などに掲載する場合には、著作権や利用条件にも注意が必要です。
また、子どもによってはフリー素材のイラストよりも、実際に利用している場所や物を撮影した写真のほうが理解しやすい場合があります。
視覚支援は絵カードだけではない
視覚支援というと絵カードが代表的ですが、ほかにもさまざまな方法があります。
例えば、
- 写真
- ホワイトボード
- カレンダー
- 時計
- タイマー
- チェックリスト
- 手順書
- 色分け
- 床や棚のマーク
- 文字による説明
なども視覚支援に含まれます。
例えば、玩具棚に玩具の写真を貼れば、どこに片付ければよいのか分かりやすくなります。
「あと10分」という言葉の理解が難しい場合には、残り時間を視覚的に確認できるタイマーを利用する方法もあります。
重要なのは「絵カードを使うこと」そのものではなく、子どもが理解しやすい形に環境や情報を整えることです。
視覚支援は個別支援計画と関連付けて考えることが大切
放課後等デイサービスでは、単に便利だから絵カードを使用するのではなく、子どものアセスメントや個別支援計画と関連付けながら支援方法を検討することが重要です。
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインでは、学齢期の障害のある子どもに対して、一人ひとりの障害の状態や発達状況、特性などに応じた発達上のニーズを踏まえた本人支援を行うことが求められています。
例えば、「次の活動が分からず不安になりやすい」という課題があれば、「スケジュールを視覚化し、自分で次の活動を確認できるようにする」といった支援方法が考えられます。
また、導入後も、「カードを見る回数が増えた」「職員への確認が減った」「予定変更時の不安が以前より小さくなった」など、本人の様子を確認しながら支援方法を見直していくことが大切です。
子どもの入退室を通知して保護者に安心を

放課後等デイサービスでは、子どもの入退室確認や保護者への通知など、日々の事務業務を効率化することも大切です。
「ビヨンド入退くん」は、子どもの入退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。施設への到着・退出状況を把握しやすくなるため、職員による確認作業の負担軽減や、保護者の安心感向上につながります。
子ども一人ひとりへの支援により多くの時間を使える環境を整えたい放課後等デイサービスは、入退室管理のデジタル化もあわせて検討してみてはいかがでしょうか。
営業連絡は一切行っていませんので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
