勤怠管理

タイムカードの改ざんを防ぐには?具体的な対策や対処法を解説

タイムカードの改ざんは違法であり、社内で発生すれば大きな問題となります。

この記事では、社員によるタイムカードの改ざんを防止したいと考えている企業の担当者に向けて、タイムカードの改ざんへの対策や改ざんが起きた場合の対処法を解説します。

タイムカードの改ざんに適切に対応するために、ぜひ参考にしてください。

タイムカードの改ざんの具体的な事例

ここでは、タイムカードの改ざんとしてよくある事例を解説します。

従業員が行う改ざん

タイムカードの改ざんは、従業員が自ら行うケースも多いです。

ケース①

自分自身は出勤していないにも関わらず、同僚に頼んで不正に打刻する

ケース②

タイムレコーダーに細工をしたり、手書きで修正することで、退勤時刻を実際よりも遅く記録する

ケース③

遅刻しそうなとき、出社している同僚にタイムカードの打刻を依頼する

このような事態が発生すれば、会社は社員に対して実際の勤務状況よりも多く給与を支払わなければならず、本来なら不要な人件費がかかってしまいます。

ケース④

タイムレコーダー打刻後に業務を再開する

「人件費削減が求められるが、業務が終わらない」「自分は残業代ももらうに値する成果を出していない」という自己判断によって、結果的に勤務時間の不当な改ざんを行うケースも少なくありません。

上司が指示する改ざん

なかには、上司がタイムカードの改ざんを主導し、それに部下が従っているケースもあります。

ケース①

部下に定時でタイムカードを切るよう指示する

ケース②

部下のタイムカードを勝手に改ざんし、残業を少なく見せる

このような改ざんを行う理由としては、「予算が厳しく、残業代を削減したい」「働き方改善を求められ、数値上改善しているように見せたい」という理由があり、個人の問題というよりは会社全体で考え直すべき問題だと言えるでしょう。

タイムカードの煩わしさから解放

タイムカードの改ざんにより会社が被るリスク

タイムカードが改ざんされていると、会社はさまざまなリスクを被ります。

社員が自らタイムカードを改ざんしていれば、本来は支払う必要のない残業代のコストがかさんでしまうのです。後から請求することは不可能ではないですが、そもそも改ざんに気づかないことも考えられます。

上司がタイムカードの改ざんを主導していれば、残業代不払いや長時間労働の強制などに対して会社側が責任を追求される可能性が高いです。現場の現状を無視した、やみくもな「予算削減」「働き方改善」を糾弾されることも考えられます。残業代の未払いを訴えられれば、遅延損害金などのペナルティを支払う可能性があるほか、社会的な信頼を失う可能性もあります。

タイムカードの改ざんの違法性

タイムカードの改ざんは違法であり、さまざまな法律に抵触する可能性があります。ここでは、タイムカードの改ざんの違法性の根拠となる法律について解説します。

詐欺罪

社員によるタイムカードの改ざんは、詐欺罪に該当する可能性があります。なぜなら、タイムカードの改ざんにより労働時間が水増しされれば、会社側は社員が実際に働いた以上に残業代を支払わされることになるからです。詐欺罪が成立した場合、当該社員は10年以下の懲役に処せられます(刑法第246条)。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

刑法第246条

私文書偽造罪・電磁的記録不正作出罪

タイムカードの改ざんは、書類の偽造にあたります。そのため、私文書偽造罪電磁的記録不正作出罪が成立する可能性が高いです。

私文書偽造罪の対象となるのは紙のタイムカードであり、罪が認められれば1年以下の懲役または10万円以下の罰金を言い渡されます(刑法第159条3項)。

(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。

 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

刑法第159条3項

一方、電磁的記録不正作出罪の対象となるのは、データを編集してタイムカードを偽造した場合です。罪が認められれば、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(刑法第161条の2第1項)。

(電磁的記録不正作出及び供用)
第百六十一条の二 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法第161条の2第1項

その他

上司の主導によるタイムカードの改ざんは、労働基準法違反につながる恐れがあるため注意が必要です。本来支払うべき残業代をきちんと支払っていなかった場合、労働基準法違反に該当します。また、企業側が社員の労働時間を正しく管理できていなかったと判定されれば、労働契約法の安全配慮義務違反に該当する可能性もあります。

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タイムカードの改ざんを未然に防ぐための対策

タイムカードの改ざんを防ぐには、どのような対策があるのでしょうか。ここでは、具体的な対策について解説します。

タイムカードの改ざんの問題性を理解させる

タイムカードは日常的に扱うものですが、嘘の申告や改ざんは違法です。実際にそのような事態が発生すれば、重大な問題となります。

社員がそのことをきちんと理解していないケースもあるため、日頃からタイムカードの重要性を伝えましょう。「払いすぎた残業代は変換が求められる」「刑法で罰せられることもある」など、改ざんが起きたときにどのような問題につながるかについても周知する必要があります。

社員教育を徹底する

社員のタイムカードに対する認識を適切に保つためには、教育の機会も必要です。研修を実施し、タイムカードの役割や意義を理解させましょう。タイムカードの打刻に関する些細な誤魔化しは、日常的にも発生する可能性があります。タイムカードは常に正確に打刻する必要があると指導しましょう。

就業規則に罰則を明記する

タイムカードの改ざんを防止するには、就業規則でタイムカードの改ざんを禁止する旨を明記することも効果的です。タイムカードを改ざんした場合の罰則もあわせて記載しておけば、抑止力として作用します。ただし、タイムカードの改ざんを理由として懲戒処分を行うには、専門的な観点からの検討が必要です。罰則として懲戒処分を定めたい場合は、専門家に妥当性を相談しましょう。

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タイムカードを改ざんされた場合の対処法

タイムカードを改ざんされた場合、適切に対処する必要があります。ここでは、具体的な対処法を解説します。

改ざんの証拠を残す

タイムカードの改ざんに気がついたら、その事実を客観的に立証するための証拠を集めましょう。この時点では、改ざんを行っている社員に気付かれないようにする必要があります。改ざんを裏付ける証拠としては、オフィスの入退室記録、パソコンのログ、オフィスや出入り口の防犯カメラの映像、機械の稼働記録などが有効です。

上司に指示されている場合は、そのことが分かるメッセージやメールを意識的に残しておくと良いでしょう。また、退勤打刻後も業務を行っていたことが分かるよう、メール送信時間のスクリーンショットや、チャットアプリのやり取りも残しておきましょう。

事実確認を行う

改ざんを裏付ける証拠を示して追求し、社員に改ざんの事実を認めさせます。このときのやり取りをボイスレコーダーで録音しておくと、後から「言った」「言っていない」の言い争いをせずに済みます。同時に、これまでに社員が不正に受け取っていた残業代についても確認し、返金を求めましょう。

社内での処分を実行する

タイムカードの改ざんを行った社員に厳しく注意し、再発防止を求めましょう。タイムカードの改ざんを知りながら放置していると、正しく打刻している社員には不平感が募ったり、「多少不正しても問題にならない」と認識される恐れがあります。

改ざんの状況によっては、懲戒処分も検討する必要があります。あらかじめ就業規則で定めておけば、それに従って処分を下すことも可能です。最も重い処分は懲戒解雇ですが、妥当性について追求される可能性もあるため、慎重な判断が必要です。

場合によっては刑事告訴も検討する

場合によっては、刑事告訴の検討が必要なケースもあります。具体的には、改ざんのやり方が大掛かりで悪質であったり、社員がまったく反省していなかったりする場合です。

ただし、刑事告訴を行えば、社内で発生した違法行為を外部に知られてしまいます。自社のイメージに悪い影響を与えないためにも、刑事告訴については慎重な判断が必要です。

タイムカードの煩わしさから解放

改ざんが起きやすいタイムカードの廃止を検討するタイミングは?

タイムカードは改ざんが起きやすいため、廃止を検討する企業も増えています。ここでは、タイムカードの廃止に適したタイミングを解説します。

拠点が複数になったとき

会社の拠点を複数にすると、すべての社員のタイムカードをまとめて管理するためには大きな手間がかかります。この場合、タイムカードは廃止して、勤怠情報をまとめて管理できる入退室管理システムを導入したほうがスムーズです。システムなら離れている拠点の社員についても、リアルタイムで勤怠の状況を確認できます。

労務管理を強化したいとき

タイムカードの場合、集計するのは月に1回としている会社も多いです。しかし、社員の働きぶりを正確に把握するためには、なるべくリアルタイムでチェックできる体制にする必要があります。労務管理の体制を強化したいときも、タイムカードではなくシステムを活用したほうが効果的です。

テレワークを導入するとき

タイムカードで勤怠管理をしていると、テレワークの導入後にリアルタイムで打刻できない社員が多くなります。テレワークにも対応するためには、インターネットを通して打刻できるシステムを取り入れると効率的です。離れた場所で働く社員の勤怠状況もすぐにわかるため、業務上の連携もしやすくなります。

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まとめ

タイムカードの改ざんは違法であり、発生すればさまざまな問題に発展します。タイムカードの改ざんを防ぐためには対策が必要です。より効率的かつ安全に勤怠管理をするためには、システムの導入も検討しましょう。

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