福祉施設

子ども食堂の運営方法とは?始め方や費用、スタッフ集め、継続するコツまで解説

子ども食堂を運営してみたいと思っても、「何から始めればいいの?」「資格や許可は必要?」「食材費や会場費はどうやってまかなうの?」など、分からないことも多いのではないでしょうか。

子ども食堂は、地域の子どもに食事を提供するだけでなく、子どもの居場所づくりや地域交流、多世代交流など、さまざまな役割を担っています。

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査によると、2025年度には全国のこども食堂が12,602カ所となりました。2018年度の2,286カ所から大幅に増えており、全国の小学校区のおよそ4割にこども食堂がある状況です。

参考:むすびえ「2025年度こども食堂全国箇所数調査」

一方、実際の運営現場では、運営資金やスタッフ、食材の不足などに悩んでいる団体も少なくありません。

この記事では、子ども食堂の基本的な運営方法から立ち上げの流れ、必要な費用、衛生管理、スタッフ集め、地域との連携、長く運営するためのポイントまで詳しく解説します。

子ども食堂とは?

子ども食堂とは、地域の子どもや保護者などに対して、無料または低料金で食事を提供する取り組みです。

ただし、全国共通の決まった運営方法があるわけではありません。

むすびえによると、月1回開催する子ども食堂もあれば、毎日のように食事を提供するところもあります。参加人数も数人程度から数百人までさまざまで、食事提供だけでなく、孤食の解消や食育、地域交流など活動目的も多様です。

また、2025年に全国のこども食堂運営者1,518人を対象として実施された調査では、「子どもの居場所づくり」を活動目的として挙げた団体が84.3%でした。そのほか、地域づくり・まちづくりや多世代交流を目的とする子ども食堂も多くあります。

つまり、「生活に困っている家庭だけを対象に食事を提供する場所」と決まっているわけではありません。

地域の子どもなら誰でも参加できる交流型の子ども食堂もあれば、ひとり親家庭など特定の家庭への支援を重視するところもあります。

実際、2025年の調査では72.1%の子ども食堂が年齢や属性による参加条件を設けていませんでした。

子ども食堂を運営するために資格は必要?

子ども食堂を始めるために、「子ども食堂運営資格」のような全国共通の資格が設けられているわけではありません。

ただし、食事を提供する以上、食品衛生上の対応は必要です。

厚生労働省は、子ども食堂を開設する前に最寄りの保健所へ相談し、食品衛生に関する指導や助言を受けるよう案内しています。また、調理担当者についても食品衛生に関する基本的な知識を身につけることを推奨しています。

参考:厚生労働省「子ども食堂における衛生管理のポイント」

営業許可や届出が必要かどうかは、活動内容や自治体によって異なります。

たとえば東京都では、福祉を目的として行われる子ども食堂などのボランティア給食のうち、営業とみなされないものについては食品衛生法上の営業許可・営業届出は不要としています。一方、保健所への任意の届出を求めている地域もあり、活動内容によっては許可や届出が必要になる場合があります。

そのため、「子ども食堂なら許可はいらない」と自己判断せず、開催場所を決めた段階で管轄の保健所に相談しておくと安心です。

子ども食堂を運営する流れ

運営する目的を決める

最初に決めたいのが、「何のために子ども食堂を開くのか」です。

子どもに低価格で食事を提供したいのか、孤食を減らしたいのか、子どもが放課後に過ごせる居場所をつくりたいのか、地域交流の場にしたいのかによって、適した運営方法は変わります。

たとえば、地域交流を目的とするのであれば、子どもだけに対象を限定せず、保護者や高齢者も参加できる形にする方法があります。

一方、支援が必要な家庭へのサポートを重視するのであれば、自治体や社会福祉協議会、学校などとの連携がより重要になるでしょう。

目的が曖昧なまま始めてしまうと、「誰を対象にするのか」「開催頻度をどうするのか」「どんな場所を選ぶのか」といった判断もしにくくなるため、まずは運営方針を整理しておきましょう。

運営メンバーを集める

次に、一緒に運営するメンバーを集めます。

調理だけでなく、食材の調達や買い出し、受付、配膳、子どもの見守り、片付け、会計、広報など、子ども食堂にはさまざまな作業があります。

代表者一人ですべてを担当しようとすると、長期的な運営が難しくなりやすいため、複数人で役割を分担できる体制をつくっておくことが重要です。

2025年のむすびえの調査では、子ども食堂1カ所あたりの運営スタッフ数は平均16.9人でした。ただし、これはあくまで全国平均であり、小規模な人数で運営されている子ども食堂もあります。

最初から大人数を集める必要はありません。まずは無理なく開催できる規模から始め、必要に応じてボランティアを増やしていく方法でもよいでしょう。

開催場所を確保する

運営メンバーが決まったら、子ども食堂を開催する場所を探します。

公民館や地域センター、自治会館、寺院・教会、飲食店、福祉施設などが使われることがあります。

場所を選ぶ際は、単に「安く借りられるか」だけではなく、調理設備、手洗い設備、冷蔵・冷凍設備、参加者が食事をするスペース、交通アクセスなども確認しましょう。

特に重要なのが厨房設備です。

厚生労働省では、調理施設の規模や設備、調理担当者の人数や能力に応じて、無理のない献立や提供食数を設定するよう求めています。

100人分の食事を提供したくても、家庭用コンロしかない会場では安全かつ時間内に調理するのが難しい場合があります。

まずは会場の設備に合わせた人数からスタートするのがおすすめです。

保健所へ相談する

開催場所や提供方法がある程度決まったら、地域を管轄する保健所へ相談しましょう。

食事をその場で調理するのか、弁当形式にするのか、何食程度提供するのかなどによって必要な対応が変わる可能性があります。

東京都が作成している「子供食堂スタートブック」でも、立ち上げ時の項目として保健所への手続き・相談が挙げられています。

参考:東京都「子供食堂スタートブック」

開催直前になってから相談するのではなく、場所や運営方法を検討している段階で一度問い合わせておくと、設備や調理方法を見直す必要が生じた場合にも対応しやすくなります。

食事の提供方法や料金を決める

次に決めるのが、提供する食事や参加料金です。

参加料金について全国共通の決まりはなく、完全無料にする子ども食堂もあれば、「子ども100円、大人300円」などの料金を設定する場合もあります。

料金を低く設定すれば参加しやすくなりますが、食材費や会場費などを運営側が負担する割合は大きくなります。

一方、参加費だけで運営費をすべてまかなうことを前提にすると、本来利用してほしい家庭が参加しにくくなる可能性があります。

そのため、参加費だけではなく、助成金、寄付、食材提供なども組み合わせて運営するのが現実的です。

周知して参加者を集める

運営準備ができても、地域の人に存在を知ってもらえなければ利用にはつながりません。

SNSやホームページだけでなく、学校、児童館、公民館、自治体、社会福祉協議会などを通じて案内する方法もあります。

特に、「支援を必要としている家庭にも利用してほしい」と考えている場合、インターネットで情報発信するだけでは十分に届かない可能性があります。

2025年のむすびえの調査でも、運営上の困りごととして「必要な人に支援を届けるための周知・広報」を挙げた運営者は47.2%にのぼりました。

学校や自治体、地域の支援機関などと関係をつくり、必要な家庭に情報を届けてもらえる体制をつくることも大切です。

子ども食堂の運営にはどのくらい費用がかかる?

子ども食堂の運営費は、参加人数や開催頻度、会場の費用、食材をどの程度寄付でまかなえるかなどによって大きく変わります。

そのため、「1回開催するのに必ず○万円かかる」という基準はありません。

食材費だけでなく、会場使用料、光熱費、調理器具、食器や消耗品、衛生用品、チラシなどの広報費、保険料なども考えておく必要があります。

特に参加人数が増えると、食材費だけでなく調理設備や保管場所などにも追加費用が発生する可能性があります。

いきなり大規模に始めるより、「月1回・20~30食程度」など無理のない範囲から始め、実際の収支を見ながら規模を調整していく方法もよいでしょう。

子ども食堂の運営費はどうやってまかなう?

参加者からの参加費だけで運営しているとは限りません。

助成金や補助金、個人・企業からの寄付、食材や物品の提供などを組み合わせている子ども食堂も多くあります。

2025年のむすびえの調査では、89.6%の子ども食堂が地域から食材の提供を受けていました。一方、運営上の困りごととして「運営資金不足」を挙げた割合も47.2%にのぼっています。

スーパーや食品メーカー、農家、地域企業などと関係を築くことで、食材の寄付につながることもあります。

また、自治体によっては子ども食堂の運営費や設備費を対象とした補助事業を実施しています。

たとえば東京都では2026年度から「子供食堂等居場所支援事業」を実施しており、区市町村が実施する子供食堂への支援について、開催頻度に応じた運営費や立ち上げ時の設備整備費などの補助基準を設けています。

参考:東京都「子供食堂等居場所支援事業」

助成制度については別記事「子ども食堂で使える助成金・補助金」も参考にしてください。

子ども食堂を運営するうえで重要な衛生管理

子ども食堂で特に重要なのが食中毒対策です。

善意による活動であっても、食事を提供する以上、食中毒のリスクは一般の飲食店と同じように存在します。

厚生労働省では、開設前の保健所への相談に加えて、調理担当者の健康確認、手洗い、食材の適切な温度管理、十分な加熱、調理後の速やかな提供などを「子ども食堂における衛生管理のポイント」として示しています。

また、東京都多摩府中保健所では、幼児や高齢者、妊婦など抵抗力の弱い人に提供する場合、生ものを控えることなども案内しています。

参考:東京都多摩府中保健所「子ども食堂の方へ 安全な食事を提供するために」

「家庭料理の延長」と考えるのではなく、不特定多数の人に食事を提供する活動として衛生管理のルールを決めておきましょう。

食物アレルギーへの対応も決めておく

子ども食堂には、食物アレルギーのある子どもが参加する可能性もあります。

すべてのアレルギーに対応した食事を用意することが難しい場合もあるため、「必ず個別対応しなければならない」と無理をする必要はありません。

重要なのは、どこまで対応できるのかを事前に決め、保護者や参加者に分かりやすく伝えておくことです。

使用した食材や市販品の原材料を確認できるようにしておくほか、「同じ厨房・調理器具を使用しているため完全な除去食には対応できない」といった情報も必要に応じて案内します。

参加者の安全に関わるため、「たぶん入っていないと思う」と曖昧な回答をするのではなく、分からない場合は分からないことを正確に伝えることが大切です。

子ども食堂は保険に入った方がいい?

子ども食堂では、食中毒だけでなく、参加者が会場内で転倒したり、ボランティアが調理中にけがをしたりする可能性もあります。

そのため、活動内容に合った保険への加入も検討しましょう。

東京都の「子供食堂スタートブック」でも、立ち上げ時に確認しておきたい事項として、ボランティア保険や行事保険などへの加入が紹介されています。

保険によって対象となる事故や補償内容は異なるため、社会福祉協議会や保険会社などに活動内容を伝えたうえで確認すると安心です。

ボランティアが集まらないときはどうする?

子ども食堂では、人手不足も大きな課題になっています。

むすびえの2025年調査では、「運営スタッフ・ボランティア不足」を困りごととして挙げた運営者が42.2%、「後継者不足」が32.3%でした。

特に注意したいのが、毎回同じ数人だけに負担が集中してしまう状態です。

代表者が食材調達から調理、会計、参加者対応、SNS更新まで担当しているような状態では、活動そのものが楽しくても長期間続けるのは難しくなります。

「調理できる人」を募集するだけではなく、受付だけ、子どもの遊び相手だけ、チラシ作成だけ、片付けだけなど、参加できる役割を細かく分けると、ボランティアとして関わるハードルを下げられます。

大学や高校、地域企業、自治会などに協力を呼びかけるのも一つの方法です。

「必要な子ども」にどうやって利用してもらう?

子ども食堂を運営していると、「本当に支援が必要な家庭ほど来てくれない」という課題に直面することがあります。

そこで重要になるのが、学校や行政、社会福祉協議会、民生委員、児童館などとの連携です。

こども家庭庁の「地域こどもの生活支援強化事業」でも、地域の食事提供場所などを活用して支援を必要とする子どもを早期に把握し、適切な支援につなげる仕組みづくりが目的とされています。

参考:こども家庭庁「地域こどもの生活支援強化事業」

ただし、運営者自身が家庭の問題をすべて解決しようとする必要はありません。

虐待や深刻な生活困窮などが疑われる場合には、子ども食堂だけで抱え込まず、行政や専門的な支援機関につなぐという役割も重要です。

子ども食堂を長く運営するためのポイント

最初から規模を大きくしすぎない

子ども食堂を始めると、「できるだけ多くの子どもに来てもらいたい」と考えるかもしれません。

しかし、参加人数が増えれば、必要な食材、人員、調理設備、会場スペースも増えます。

毎回100食を提供してスタッフが疲弊し、半年で終了してしまうより、月1回30食を無理なく何年も続けられる方が、地域にとって重要な居場所になりやすいでしょう。

特に立ち上げ当初は小規模に始め、参加者や協力者が増えるのに合わせて活動を広げていく方法がおすすめです。

「代表者がいなくても回る」運営を目指す

子ども食堂の運営で起こりやすいのが、代表者への負担集中です。

食材の調達方法や当日の流れ、会計方法、連絡先などを代表者しか把握していないと、その人が休んだだけで開催できなくなってしまいます。

普段から作業を分担し、開催手順や連絡先などを共有しておくことで、特定の人に依存しない運営に近づけられます。

後継者不足が実際に全国の子ども食堂の課題となっていることからも、活動開始当初から「誰か一人が頑張り続ける仕組み」にしないことが重要です。

地域とのつながりを増やす

長く運営している子ども食堂ほど、食材提供だけでなく、場所の提供、寄付、運営サポートなど複数の地域支援を受けている傾向があります。

むすびえの2025年調査では、2019年度以前から活動している子ども食堂では、地域から3種類以上の支援を受けている割合が高いことも報告されています。

近隣のスーパーから食材を提供してもらい、自治会から会場を借り、学生にボランティアとして参加してもらうなど、地域のさまざまな人とつながれば、一つの支援がなくなっただけで運営できなくなるリスクも減らせます。

子ども食堂だけで活動を完結させようとせず、「地域みんなで運営する場所」にしていくことが継続につながります。

子ども食堂の運営に困ったら地域ネットワークに相談する

これから子ども食堂を始める場合も、すでに運営している場合も、地域の子ども食堂ネットワークにつながっておくと便利です。

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえでは、子ども食堂の運営を検討している人に対して、地域のネットワーク団体へ相談することを案内しています。

参考:全国こども食堂支援センター・むすびえ

地域ネットワークでは、助成金や食材提供の情報、ボランティア募集、運営上の相談などについて情報交換できる場合があります。

近隣の子ども食堂がどのように運営しているのかを知るだけでも、自分たちの活動の参考になるでしょう。

子ども食堂の運営では「続けられる仕組み」をつくることが大切

子ども食堂は、特別な資格を持っている人だけが運営するものではありません。

しかし、食事を提供する以上は衛生管理が必要であり、会場の確保やスタッフ集め、資金調達、広報など、実際に始めてみるとさまざまな運営業務が発生します。

全国の子ども食堂は2025年度に12,602カ所まで増えましたが、現場では運営資金、人材、食材、後継者などの不足も課題となっています。

だからこそ重要なのは、「できるだけ大きな子ども食堂をつくること」ではなく、「運営する人たちが無理なく続けられる仕組みをつくること」です。

まずは開催する目的や対象者を決め、少人数・低頻度から始めても問題ありません。自治体や保健所、社会福祉協議会、地域の子ども食堂ネットワーク、地域企業などともつながりながら、自分たちの地域に合った運営方法をつくっていきましょう。