従業員の休憩時間の最低ラインは、法律で定められています。適切な休憩時間を取らせなければ、従業員が働きすぎによる不調に見舞われたり、企業がペナルティを受けたりする可能性があります。
ここでは、企業の勤怠管理担当者に向けて、休憩時間の定義や計算方法、従業員とのトラブル対策などについて紹介します。休憩時間の管理に役立ててください。
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勤務時間・労働時間・休憩時間の定義とは
労働にかかわる時間について、言葉の意味を解説します。労働基準法で定義された休憩時間の定義も紹介します。
勤務時間=労働時間+休憩時間
「勤務時間」は、従業員が出社してから退社するまでの時間を指します。従業員は「労働時間」の合間に「休憩時間」を挟んで働きます。仕事が定時に終わらなければ残業が発生しますが、残業に要した時間も労働時間としてカウントしなければなりません。
勤務時間は、就労時間または就業時間とも呼ばれ、企業ごとに長さが異なります。
労働基準法による休憩時間の定義
休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。従って、待機時間等のいわゆる手待時間は休憩に含まれません。
厚生労働省HPより
労働基準法では、休憩時間は労働時間の途中に置かれたものであり、「労働者が権利として労働から離れることを保証された時間」と定義されています。また、休憩時間分については、労働者に対して賃金を支払う義務はありません。
よって、「休憩時間」にもかかわらず電話番や来客対応をしなければいけない場合、それは勤務時間とみなさら、別途休憩時間を与える必要があります。
【労働時間別】確保すべき休憩時間の長さ
労働基準法第34条にもとづき、確保すべき休憩時間の長さについて具体的に解説します。
1. 労働時間が6時間未満
休憩時間を確保する義務はありません。ただし、6時間ぴったり働かせる場合は、残業が発生した時点で違法となってしまいます。残業対策として、あらかじめ休憩を設定しておくと安心です。
2. 労働時間が6~8時間の場合
労働時間が6時間を超えると休憩が必要です。8時間以内に労働が終わる場合は、労働時間の間に休憩時間を45分以上挟んでください。
3. 労働時間が8時間を超える場合
労働時間が8時間を超える場合は、合間に1時間以上の休憩が必要です。また、労働基準法には残業時間の上限も決められています。1時間休憩させたという理由で、長時間働かせすぎてはいけません。
労働時間 | 6時間未満 | 6~8時間 | 8時間 |
---|---|---|---|
休憩時間 | なくてもOK | 45分以上 | 1時間以上 |
労働基準法第34条「休憩の3原則」
労働基準法第34条の「休憩の3原則」には、休憩の基本的な考えがまとめられています。
1. 自由利用
従業員は、休憩時間には完全に労働から解放されなければなりません。必ずしもオフィス内で過ごす必要はなく、外部の病院や、郵便局などへの外出も認められます。
2. 一斉付与
原則として、休憩は従業員に一斉に与える必要があります。業務に電話番や接客が生じる場合は、交代して休憩を取らせるなど労働者を完全に休ませる時間を設ける必要があります。
労働基準法別表第1に掲げる業種や、労使協定を結んだ企業であれば、一斉付与の例外となります。休憩時間にサービスが完全にストップすると、社会的な損失が大きいと考えらえるためです。サービス業の多くは、労働基準法別表第1に掲げる業種に該当します。
3. 途中利用
「途中利用」では、休憩時間を労働時間の間に挟むよう義務づけられています。労働を始める前や、労働を終えた後には休憩を付与できません。
「休憩時間を取らないため、その分早く帰りたい」「休まずに働くため、始業時間を遅らせてほしい」などの希望は、認められません。
休憩時間を正しく管理する方法
休憩時間を正しく管理しなければ、労働基準法を守れません。休憩時間の管理方法を紹介します。
出勤管理表、出勤簿
出勤管理表や出勤簿で記録する内容は以下のとおりです。
- 出勤した日付
- 出勤時刻、退勤時刻
- 休憩の開始時刻、終了時刻
時間だけでなく、日付や時刻もわかるように書きましょう。働いた時間帯によっては深夜残業手当や休日出勤手当などの特別手当が発生するためです。
記録方法は、自己申告制またはタイムカードです。
タイムカード
タイムカードは、レコーダーに挿しこむだけで打刻でき、パソコン作業が苦手な従業員でも簡単に記録できます。一方、タイムカードを使うと不正やミスが起きやすい傾向です。ほかの従業員に自分のカードで打刻させるリスクや、打刻ミスが発生すると訂正に手間がかかる点を理解しておきましょう。
自己申告制
自己申告制は、手書きまたはエクセルで記録可能です。手書き、エクセルとも無料で導入できるため、コストと手軽さについてはメリットといえます。
一方、自己申告制では、記録の正確さを勤怠管理者が確認する手間が発生します。その上、ミスに気がつかないまま記録を続けられると、正しく休憩時間を把握できません。
入退室管理システム
休憩時間を正しく記録して管理するためには、入退室管理システムがおすすめです。入退室管理システムは、パソコンやスマートフォンから打刻できるため、場所を問わず労働状況を記録できます。自動的にデータが蓄積・集計され、リアルタイムに休憩の取得状況がわかります。また、勤怠管理者、従業員ともシステム上で労働状況を確認可能です。
高機能な入退室管理システムですが、導入、維持コストがかります。導入するシステムを検討する際は、コストも比較しましょう。
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休憩時間と賃金の具体例【所定労働時間が9~17時までの場合】
所定労働時間とは、企業ごとに固定された労働時間です。休憩時間と賃金の具体例について解説します。
残業なしの場合
勤務時間は8時間となります。労働の合間に、合計して45分以上の休憩を取れば、労働基準法に違反しません。所定労働時間内のため残業代は不要です。
9~20時まで働いた場合
労働の合間に合計1時間以上の休憩を取る必要があります。なお、所定時間外労働が2時間発生するため、雇用主はその分の残業代を支払いましょう。
法定労働時間とは、原則として1日に8時間、1週間に40時間の労働時間を指します。法定労働時間の範囲であれば、所定労働時間を超えても企業に割増賃金での残業代を支払う必要はありません。法定労働時間内の残業の場合は、割増賃金の支払義務はありませんが、1時間あたりの基礎賃金に労働時間を掛けた額を支払う必要があります。
法定労働時間を超えて働いた分は法定時間外労働として扱われます。法定時間外労働は割増賃金での残業代を支払う義務があります。
9~18時まで働いた場合
労働の合間に合計して1時間以上の休憩を取る必要があります。
残業分が所定労働時間に収まるため、割増賃金での残業代はかかりません。ただし、所定労働時間を超えた時点で、基礎賃金をもとに残業代を支払う必要があります。
休憩時間に関する注意点
休憩時間に関し、勤怠管理者が悩まされがちな課題と対策を紹介します。トラブルが起きないように対応を統一しておきましょう。
休憩時間が取れなかったときの対応
決められた休憩時間に電話対応や接客などが入ってしまうと、休憩の自由利用ができません。労働した分は、法定内労働であっても割増賃金を払うべきです。
休憩の考え方が、従業員と企業の間で相違があるとトラブルを生みます。従業員に対し、休憩時間には原則働いてはいけないと説明してください。また、休憩時間に対応してもらった分は、別途休んでもらう必要があります。
残業が発生した場合の対応
所定労働時間と残業を足し合わせて労働時間を計算し、取るべき休憩時間を算出してください。
予期せぬ残業が発生して急遽、休憩を取らないまま残業をしてしまう恐れもあります。多くの企業では、所定労働時間が6時間以内でも、残業を見越してあらかじめ休憩を設定しています。
雇用形態が異なる社員への対応
雇用形態の違いによらず、労働基準法に定められているルールで休憩時間を与えてください。休憩時間について、正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなどの区別はありません。
休憩を分割する場合の対応
労働時間の合間に休憩を取りさえすれば、休憩の分割付与は可能です。ただし、15分と30分のような短時間の休憩では、十分なリフレッシュができない場合があります。しっかり休憩してもらうためにも、従業員に配慮して休憩時間を配分してください。
タバコ・トイレ休憩が多い労働者への対応
タバコ・トイレ休憩の多い従業員に対し、周囲からクレームがくる場合があります。不公平感を与えないように、全従業員の休憩時間を確保しましょう。
また、タバコやトイレ休憩を装い、従業員が仕事をさぼる場合があります。不当に休憩を取っていると判明した場合は、ペナルティを与えても構いません。勤務態度に問題があるとして、人事評価や賞与に反映しましょう。
時短勤務・半休を取得した場合の休憩時間
多くの企業は、時短勤務者にもほかの従業員と同様の休憩時間を与え、休憩時間を守らせています。
たとえば、時短勤務で9~15時まで働く場合は、労働時間は6時間です。6時間以内ならば休憩は不要ですが、毎日ぴったり15時に帰れるとは限りません。
半休を取得した場合も、休憩が必要なケースがあります。たとえば、午前半休を取った場合に、休憩を取らずに13~20時まで働かせることはできません。
時短勤務者、半休取得者にも休憩を取る権利があります。労働時間をチェックし、適正な休憩時間を確保させましょう。
まとめ
休憩時間は、労働基準法に従い取得する義務があります。休憩時間を正しく管理するために、日々の労働状況を記録しましょう。また、手軽に正確な休憩時間を記録するためには、入退管理システムの導入がおすすめです。
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