年度末が近づくと、5歳児クラスの担任を中心に作成することになる「保育所児童保育要録」。
「子どもの苦手なことはどこまで書いていい?」「10の姿を全部盛り込む必要がある?」など、書き方に悩む保育士も多いのではないでしょうか。
この記事では、保育所児童保育要録の基本的な書き方から、項目別の例文、書く際の注意点まで詳しく解説します。
保育所児童保育要録とは?
保育所児童保育要録とは、保育園での子どもの育ちや保育の過程などを記録し、就学先となる小学校へ引き継ぐための資料です。
こども家庭庁は、保育所児童保育要録に関する通知や記載事項、参考様式を公開しています。
保育所保育指針では、保育所と小学校が子どもの育ちを共有し、幼児期から小学校以降の生活・学習へ円滑につなげていくことが求められています。
そのため要録は、「卒園時の成績表」というより、その子を次に担当する先生への引き継ぎ資料と考えると、何を書くべきか整理しやすくなります。
保育所児童保育要録は誰が書く?
要録は、施設長の責任のもと、担当する保育士が記入することとされています。作成した要録については、写しを子どもの就学先となる小学校の校長へ送付します。
一般的には5歳児クラスの担任が中心となって作成しますが、その年度だけを見て書くのでは十分とはいえません。
過去の個人記録や指導計画、ほかの保育士からの情報なども確認しながら、
- 入園してからどのように育ってきたか
- 最終年度にどのような姿が見られたか
- どのような援助によって変化したか
- 小学校でも引き継いだほうがよいことは何か
という流れで捉えることが重要です。
要録を書くときに大切な3つのポイント
「できる・できない」の評価表にしない
要録を書くときに特に注意したいのが、「○○ができる」「○○ができない」といった能力のチェック表にならないようにすることです。
たとえば、「友達に自分から話しかけることができない」だけでは、子どもの一部分しか伝わりません。
それよりも、「自分から友達の輪に入ることには慎重な姿が見られるが、保育者が仲立ちすると安心して遊びに加わり、自分の考えを伝えながら遊びを楽しむようになった」と書けば、現在の姿+必要な援助+育っている部分まで小学校へ伝えられます。
要録は子どもをランク付けする書類ではなく、その子への理解を次の教育につなげる書類だと意識しましょう。
抽象的な性格ではなく具体的な姿を書く
「優しい子」「元気な子」「おとなしい子」といった表現だけでは、読み手によって受け取り方が変わります。
たとえば「優しい」であれば、「年下の子どもが着替えに困っていることに気付き、『手伝おうか?』と声をかける姿が見られた」など、実際の行動を書くほうが子どもの姿が伝わります。
「どんな場面で」「何をして」「どのような育ちが見られたか」を意識すると書きやすくなります。
変化や過程を書く
要録では年度末の状態だけではなく、そこに至るまでの変化も重要です。
たとえば、
「当初は~だった」
↓
「○○という経験や保育者の援助があった」
↓
「現在では~する姿が見られる」
という順番で整理すると、子どもの育ちが伝わります。
「以前の姿」+「経験・援助」+「変化した姿」
この型を覚えておくと、文章を組み立てやすくなります。
保育所児童保育要録の書き方と例文
自治体によって使用する様式は異なる場合がありますが、こども家庭庁では要録の参考様式を公開しています。
ここからは、主な項目ごとに書き方を見ていきましょう。
最終年度の重点
「最終年度の重点」には、その年度の保育において園やクラスとして重点的に取り組んできた内容を記載します。
5歳児クラスの年間指導計画などを確認すると書きやすいでしょう。
「友達と考えや思いを伝え合いながら、共通の目的に向かって協力する楽しさや達成感を味わえるようにする。」
「さまざまな活動に主体的に関わり、自分なりに考えたり工夫したりしながら取り組む経験を重ねる。」
個人の目標ではなく、クラス全体の保育の方向性を書くことがポイントです。
個人の重点
「個人の重点」には、その子どもの育ちを踏まえ、どのようなことを大切にして保育してきたのかを書きます。
「苦手を直す」という視点よりも、その子の良さを生かしながらどのような育ちを支えてきたかを考えてみましょう。
「自分の思いを安心して表現し、友達と思いや考えを伝え合いながら遊びを楽しめるようにする。」
「興味をもった活動にじっくり取り組み、自分で考えたり試したりする経験を重ねられるようにする。」
「自分の気持ちを受け止めてもらう安心感の中で、少しずつ気持ちを切り替えられるようにする。」
保育の展開と子どもの育ち
要録の中でも特に悩みやすい部分です。
ここでは、日々の生活や遊びの具体的な姿から、その子にどのような育ちが見られたのかを記載します。
単に出来事を並べるのではなく、子どもの姿 → 保育者の関わり・経験 → 育ちまで書くと内容が伝わりやすくなります。
「進級当初は自分の考えを強く主張し、友達と意見が異なると遊びから離れることもあった。保育者が双方の思いを言葉にしながら仲立ちする中で、徐々に相手の考えにも耳を傾ける姿が増えた。秋頃からは、友達と相談しながら遊び方を決めたり、折り合いをつけたりしながら一緒に遊ぶことを楽しむようになった。」
「身の回りのことに自分から取り組み、翌日の予定を確認しながら持ち物を準備する姿が見られるようになった。行事の準備でも必要なことを自分なりに考え、友達に声をかけながら進めるなど、見通しをもって行動する姿が増えている。」
「絵を描いたり廃材を使って制作したりすることを好み、自分のイメージを形にすることを楽しんでいる。制作中に思うようにいかないときにも、素材を変えたり友達の方法を参考にしたりしながら試し、自分なりの表現につなげている。」
「友達や保育者との会話を楽しみ、自分が経験した出来事を順序立てて話そうとする姿が見られる。絵本や物語にも関心をもち、覚えた言葉を遊びの中で使ったり、自分で物語を考えて友達に話したりして楽しんでいる。」
特に配慮すべき事項
小学校生活において配慮が必要だと考えられることがある場合には、その内容も記録します。
ただし、「落ち着きがない」「集団行動ができない」など、子どもを一面的に評価する表現は避けましょう。
重要なのは、どんな場面で困りやすいか、どのような対応をすると安心できるかまで伝えることです。
「予定の変更が突然伝えられると不安が強くなることがある。事前に活動の流れを知らせたり、絵や文字で予定を示したりすると見通しをもち、落ち着いて活動に参加することができる。」
このように書けば、小学校側も具体的な支援につなげやすくなります。
最終年度に至るまでの育ちに関する事項
入園から年中頃までの育ちの中で、現在の子どもの姿を理解するために重要な内容を記載します。
すべての出来事を時系列で書く必要はありません。
「入園当初は新しい環境への不安が強く、保育者のそばで過ごすことが多かった。園生活に慣れるにつれて興味のある遊びを通して友達との関わりが広がり、4歳児頃からは仲の良い友達とイメージを共有しながらごっこ遊びなどを楽しむ姿が増えた。」
過去の姿を書く目的は「昔できなかったこと」を残すことではなく、現在までどのような育ちの過程があったのかを伝えることです。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」と要録の関係
保育所保育指針では、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として次の10項目が示されています。
- 健康な心と体
- 自立心
- 協同性
- 道徳性・規範意識の芽生え
- 社会生活との関わり
- 思考力の芽生え
- 自然との関わり・生命尊重
- 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
- 言葉による伝え合い
- 豊かな感性と表現
厚生労働省「保育所123|幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
ただし、この10項目は卒園時までに全員がクリアしなければならないチェックリストではありません。
保育所保育指針では、保育活動全体を通して資質・能力が育まれている子どもの具体的な姿として位置付けられています。
そのため、「自立心○」「協同性△」「言葉による伝え合い○」のように評価するものではありません。実際の子どもの姿には複数の育ちが同時に現れます。
たとえば、「友達と相談しながら段ボールで家を作り、倒れないよう形を変えたり材料を追加したりした」という一つのエピソードにも、
- 協同性
- 思考力の芽生え
- 言葉による伝え合い
- 豊かな感性と表現
など複数の姿が含まれています。
「10の姿に子どもを当てはめる」のではなく、実際の子どもの姿から、どのような育ちが表れているかを読み取ると考えるとよいでしょう。
要録で避けたいNG表現
「落ち着きがない」
誰にでも見られる特徴で、どのような場面を指しているのかがわからず、小学校側も対応しづらい表現です。
「長時間の一斉活動では途中で席を離れることがあるが、活動の流れや終了時間を事前に伝えることで、見通しをもち参加できることが増えている。」
「わがまま」
こちらもどの子どもにもケースバイケースで見られる特徴です。性格そのものを主観的に評価するような表現は避けましょう。
「自分のやりたいことへの思いが強く、友達と意見が異なると自分の考えを強く伝えることがある。保育者が互いの気持ちを整理して伝えることで、相手の思いにも気付く姿が増えている。」
「人見知り」
こちらもケースバイケースでイメージしづらい言葉です。要録に特記すべきと判断した具体的な行動に置き換えましょう。
「初めて関わる人や新しい環境では様子を見ながら過ごすことが多い。慣れてくると自分から話しかけたり、好きな遊びに誘ったりする姿が見られる。」
子どもの課題や苦手なことを書いてもいい?
要録に子どもの苦手なことを書いてはいけないわけではありません。
むしろ、小学校でも配慮が必要なことを伝えなければ、子どもが新しい環境で困ってしまう場合があります。
ただし、「○○できない」「問題がある」だけで終わらせず、困りやすい状況+現在の姿+有効だった援助までセットで伝えましょう。
たとえば、
×「集団行動が苦手である」
ではなく、
○「大人数での活動では周囲の音や動きに気を取られ、指示を聞き逃すことがある。活動前に個別に声をかけ、次に行うことを確認すると安心して参加できる」
とすれば、小学校での支援にも活用できます。
要録を効率よく書くためには日頃の記録が重要
年度末になってから1年間を思い出そうとしても、「この子、春頃どんな様子だったっけ?」となってしまいがちです。そこで重要になるのが、日々の記録です。
特に、
- 印象的だった子どもの発言
- 友達との関わり
- 初めて挑戦したこと
- 以前との変化
- 興味・関心が広がった出来事
- 保育者の援助によって変化したこと
などを簡単に残しておくと、要録作成時に役立ちます。
「○○ちゃんは優しい」のような評価よりも、「年下児が困っているのを見て靴を一緒に探していた」という事実を残しておくほうが、後からさまざまな育ちを読み取れます。
要録作成を担任一人の仕事にしないことも大切
要録は5歳児担任が中心となって作成することが多いものの、その子どものことを最もよく知っているのが現在の担任だけとは限りません。
乳児期から在園している子どもであれば、過去の担任だからこそ知っている育ちの過程もあります。
そのため園全体で、
- 過去の個人記録を確認できるようにする
- 必要に応じて前年度担任から情報を聞く
- 主任や園長が内容を確認する
- 書き方や表現の基準を職員間で共有する
といった仕組みを整えるとよいでしょう。
要録は「5歳児担任が年度末に一人で仕上げる書類」ではなく、園で積み重ねてきた子どもの育ちを小学校へつなぐ資料として扱うことが重要です。
ICTを活用して日々の記録を要録につなげる
要録作成そのものを効率化するには、年度末だけ作業方法を変えるのではなく、日頃から子どもの記録を蓄積しやすい環境をつくることも重要です。
紙の連絡帳や個人記録、出欠表などが別々に管理されていると、年度末に必要な情報を探すだけでも時間がかかります。
保育ICTシステムなどを活用し、
- 出欠情報
- 保護者との連絡
- 子どもの日々の様子
- 写真や活動記録
などをデジタルで蓄積しておけば、過去の記録を振り返りやすくなります。
ICT化は単に書類を紙からデジタルへ置き換えるものではありません。日頃の情報を蓄積し、必要なときに取り出せる状態をつくることが、要録をはじめとする年度末業務の負担軽減にもつながります。
ICT化で職員の負担を減らし保護者満足度を上げる
保育園では、子どもへの支援だけでなく、保護者との情報共有や日々の入退室管理も重要な業務です。
こうした業務をデジタル化することで、職員の負担を減らしながら、保護者にとっても「子どもの様子がわかる」「施設に到着したことを確認できる」といった安心につなげられます。
ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。
日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。
保育園において、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。
ビヨンド入退くん

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。
「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。
安全管理を強化しながら、保護者への安心提供と業務効率化を両立したい場合は、ビヨンド入退くんの導入をぜひご検討ください。
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まとめ
保育所児童保育要録は、卒園する子どもの「できること」を評価するための書類ではありません。
保育園でどのような経験をし、周囲との関わりの中でどのように育ってきたのかを小学校へ伝え、次の生活や学びへつなぐための大切な資料です。
書くときには、
具体的な子どもの姿
↓
その背景にある経験や保育者の援助
↓
そこから見られた育ち・変化
という流れを意識すると、その子らしさが伝わる要録になります。
また、年度末に記憶だけを頼りに作成するのではなく、日々の記録を蓄積し、職員間で子どもの育ちを共有できる仕組みを整えておくことも重要です。
要録を「年度末に作らなければならない書類」と捉えるのではなく、園で積み重ねた子どもの育ちを、小学校へバトンタッチする資料として作成していきましょう。


