幼保

不適切保育チェックリスト|具体例と園でできる防止策を解説

「自分では普通の声かけだと思っていたけれど、もしかして不適切保育にあたる?」
「職員によって子どもへの接し方が違うので、一度園全体で振り返りたい」

このように感じたときに活用したいのが、不適切保育を防ぐためのチェックリストです。

本記事では、保育園や認定こども園などで活用できる不適切保育のチェックリストを紹介します。不適切保育の考え方やチェック後の対応、園全体で防止するためのポイントについても解説するため、園内研修や日々の保育の振り返りに活用してください。

そもそも不適切保育とは?

不適切保育について考えるうえでは、まず「子どもの人権や人格を尊重した関わりになっているか」という視点を持つことが重要です。

従来、国の手引きでは不適切な保育について、保育所保育指針が示す子どもの人権・人格の尊重という観点から、改善が必要と判断される関わりとして整理されてきました。

また、全国保育士会のセルフチェックリストでは、「良くない」と考えられる関わりについて、大きく次の5つの観点から整理しています。

  • 子ども一人ひとりの人格を尊重しない関わり
  • 物事を強要したり、脅したりするような関わり
  • 罰を与える、乱暴な関わり
  • 子どもの育ちや家庭環境を考慮しない関わり
  • 差別的な関わり

参考:全国保育士会「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」

なお、2026年現在は、こども家庭庁・文部科学省が「保育所や幼稚園等における虐待防止及び発生時の対応等に関するガイドライン(令和8年改訂)」を公開しています。

同ガイドラインでは、虐待について「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」の4類型に整理し、未然防止から発生時の対応まで示しています。

そのため、「これは虐待ではないから問題ない」と考えるのではなく、虐待に至る前の小さな不適切な関わりも含めて日常的に振り返ることが大切です。

【すぐ使える】不適切保育チェックリスト

ここからは、保育現場で起こりやすい場面をもとにしたチェックリストを紹介します。

全国保育士会のセルフチェックリストなどで示されている人権擁護の考え方を参考にしながら、日常の保育を振り返りやすいよう独自に項目を整理しています。

「絶対にしていない」「ときどきある」「よくある」などでチェックしてみましょう。

子どもの人格を尊重できているか

チェック項目チェック
子どもの失敗をほかの子どもの前で笑ったり、からかったりしていない□
「赤ちゃんみたい」「そんなこともできないの?」など、子どもを傷つける言葉を使っていない□
子どもの話を聞かず、大人の都合だけで行動を決めていない□
子どもの容姿・性格・能力などをほかの子どもと比較していない□
人前で必要以上に叱責していない□
子どもが嫌がっていることを面白がったり、からかったりしていない□
子どもの気持ちや意思を確認する機会を設けている□

例えば、登園時に保護者から離れられない子どもに対して、「いつまで泣いているの」「赤ちゃんじゃないんだから」と言ってしまうケースがあります。

保育を進めるうえで切り替えを促す必要がある場面はありますが、子どもの不安そのものを否定したり、恥ずかしいこととして扱ったりしないことが重要です。

強要・脅すような声かけをしていないか

チェック項目チェック
「言うことを聞かないなら〇〇しないよ」と脅すような言い方をしていない□
食事を無理に完食させていない□
子どもが嫌がっている活動への参加を一方的に強制していない□
トイレや着替えなどを必要以上に急かしていない□
泣いている子どもに「泣くのをやめなさい」と感情を抑えつけていない□
「先生の言うことを聞けないなら遊べません」など、過度に行動を制限していない□
子どもに選択肢を示すなど、意思を尊重する声かけができている□

保育園には給食や午睡、降園準備など一定のスケジュールがあるため、子どもに行動を促すこと自体が問題なのではありません。

重要なのは、大人の指示に従わせることだけを目的とした関わりになっていないかという点です。

「あと5分遊んだら片付けようね」「これとこれならどちらから片付ける?」など、子どもが見通しを持ったり、自分で選んだりできる伝え方を意識しましょう。

罰や乱暴な関わりをしていないか

チェック項目チェック
腕を強く引っ張る、押すなどの乱暴な行為をしていない□
子どもの頭や身体を叩いていない□
子どもを長時間立たせるなど、罰として特定の行動をさせていない□
「悪いことをしたから」という理由で食事や遊びなどを不当に制限していない□
子どもを一人だけ別の場所に長時間放置していない□
感情的になった状態で子どもを強く叱っていない□
身体を動かす必要がある場合も、安全確保に必要な範囲の関わりになっている□

危険な場所へ走り出した子どもを止めるなど、安全を守るため身体に触れる必要があるケースもあります。

そのため、「身体に触れた=不適切保育」と単純に判断するものではありません。

一方で、職員自身の怒りや苛立ちをぶつけるために身体を強く引っ張る、押すといった行為は避けなければなりません。

子どもの発達や家庭環境を考慮できているか

チェック項目チェック
年齢だけを基準に「〇歳ならできて当然」と決めつけていない□
発達の個人差を考慮している□
障害や発達特性を理由に活動から安易に外していない□
家庭環境を子どもの前で否定的に話していない□
保護者の職業・経済状況・家庭事情などによって子どもへの接し方を変えていない□
日本語の理解度などに応じた伝え方を工夫している□
一人ひとりに合った援助方法を職員間で共有している□

同じ年齢でも、得意なことや苦手なこと、発達のペースは異なります。

例えば、着替えに時間がかかる子どもに「みんなはもう終わっているよ」と比較して急かすのではなく、その子がどこで困っているのかを確認することが大切です。

差別的な関わりをしていないか

チェック項目チェック
性別によって遊びや役割を決めつけていない□
国籍や文化的背景について否定的な発言をしていない□
障害や発達特性をからかうような表現をしていない□
家族構成を「普通」「普通ではない」と評価していない□
特定の子どもだけを繰り返し叱ったり、逆に特別扱いしたりしていない□
好き嫌いなど職員個人の感情によって対応を変えていない□
子ども同士の差別的な発言があった場合に適切に対応している□

無意識の思い込みから生まれる言葉にも注意が必要です。

例えば、「男の子なんだから泣かない」「女の子なんだからお行儀よく」といった言葉も、性別によって行動を決めつける表現になり得ます。

食事中の関わりをチェックする

チェック項目チェック
完食を必要以上に強制していない□
嫌いな食べ物を無理に口へ入れていない□
食べるのが遅いことを責めていない□
食事量や発達の個人差を考慮している□
食事を罰やご褒美として利用していない□
アレルギーや体調など必要な情報を職員間で共有している□

食育の観点から、さまざまな食べ物に触れる経験を作ることは大切です。

しかし、「全部食べるまで遊べない」など、完食そのものが目的になってしまうと子どもに強い負担を与える可能性があります。

その日の体調や食欲、発達なども踏まえて対応しましょう。

午睡・着替え・排泄時の関わりをチェックする

チェック項目チェック
眠れない子どもを必要以上に叱っていない□
寝ることを強要していない□
おねしょや排泄の失敗を責めていない□
排泄の失敗をほかの子どもの前で話題にしていない□
着替えや排泄時のプライバシーに配慮している□
子どもが嫌がる着替えなどを乱暴に行っていない□
排泄や着替えを必要以上に急かしていない□

着替えや排泄は、特に子どもの尊厳やプライバシーへの配慮が求められる場面です。

「失敗して恥ずかしい」という感情を子どもが持つ可能性もあるため、ほかの子どもの前で大きな声で注意することなどは避けましょう。

チェックがついたら「不適切保育をした保育士」なの?

チェックがついたからといって、その職員をすぐに「問題のある保育士」と決めつけるべきではありません。そもそもセルフチェックの目的は、職員を処罰したり順位付けしたりすることではなく、普段の関わりを振り返り、改善につなげることです。

保育現場では、「給食の時間が迫っていて、つい強く急かしてしまった」「何度声をかけても危険な行動を繰り返す子どもに、強い口調になってしまった」といった場面も起こり得ます。

大切なのはチェックを隠すことではなく、なぜその対応になったのか→ どうすれば別の対応ができたのか→ 園として改善できることはないかまで考えることです。

例えば「着替えを急かしてしまう」という項目に複数の職員がチェックを付けているのであれば、個人の問題ではなく、園全体のスケジュールに余裕がない可能性もあります。

不適切保育のチェックリストを効果的に活用する方法

チェックリストは、一度配布して終わりにするだけでは十分な効果を得られません。

園全体の保育の質を高めるため、次のような方法で活用しましょう。

定期的にセルフチェックを行う

半年に1回、年に1回など、定期的に自分の保育を振り返る機会を設けましょう。

同じ項目でも、担当するクラスや園児、職員配置などが変われば結果が変化することがあります。新人研修や年度初めの研修などに組み込むのもおすすめです。

実際に東京都府中市では、公立保育所の全職員を対象に全国保育士会のセルフチェックリストを活用し、日頃の保育の振り返りを実施しています。さらに、集計結果をもとにグループワークを実施し、職員間で気付きや意識を共有しています。

参照:人権擁護のためのセルフチェックリストの実施結果について

チェック結果を使って職員同士で話し合う

「これをしたら必ず不適切、これは絶対に問題ない」とすべての場面を機械的に分類できるわけではありません。例えば、子どもが道路へ飛び出そうとしたため腕をつかんだ場合と、言うことを聞かないことに腹を立てて腕を強く引っ張った場合では、同じ「腕をつかむ」という行為でも状況が異なります。

そこで園内研修では、「この場合ならどうする?」「ほかにどんな声かけができる?」と具体的な場面を設定して話し合ってみましょう。

職員による判断の違いが見えやすくなり、園としての共通認識を作ることができます。

「できていない人探し」に使わない

チェックリストを記名式で回収し、「〇〇先生はチェックが多い」「この先生は問題がある」という使い方をすると、職員が本当の回答を書けなくなる可能性があります。結果として、チェックリストそのものが形骸化してしまっては本末転倒です。

必要に応じて匿名で実施したり、個人の結果ではなく園全体の傾向を集計したりするなど、率直に回答できる仕組みを考えましょう。

日常で起こりやすい場面をチェック項目に追加する

既存のチェックリストをそのまま利用するだけでなく、自園で起こりやすい場面を追加する方法もあります。

例えば、「散歩に出る直前になると職員が慌ただしくなる」「給食前の片付けで強い声かけが増える」「合同保育になる夕方にトラブルが起きやすい」など、園によって課題となる時間帯や場面は異なります。

ヒヤリハットや職員から寄せられた相談なども参考にして、自園専用のチェックリストへ更新していくと、より実践的なツールになります。

不適切保育が起こる原因は保育士個人だけとは限らない

不適切保育が発生した際、行為をした職員個人だけに原因を求めてしまうと、根本的な改善につながらない場合があります。

例えば以下のような環境も、不適切な関わりが生まれる背景になり得ます。

  • 職員数に余裕がない
  • 休憩を十分に取れない
  • 業務量が多い
  • 保育方針が職員間で統一されていない
  • 新人が先輩に相談しづらい
  • 不適切な関わりを見ても指摘しづらい
  • ベテラン職員のやり方が暗黙のルールになっている

チェックリストで同じ項目に複数の職員からチェックがついた場合は、「誰が悪いのか」ではなく「なぜ園全体でこの行動が起こりやすいのか」という視点で原因を探りましょう。

不適切保育を防ぐために園ができること

保育について相談できる環境を作る

「さっきの対応、強すぎたかもしれない」と思ったときに、職員同士で気軽に相談できる環境を作ることが重要です。

不適切な関わりを完全にゼロにするためには、問題が大きくなってから対応するのではなく、小さな違和感の段階で共有できる組織づくりが欠かせません。

上司から部下への指導だけではなく、同僚同士で保育について話せる時間を作りましょう。

定期的に園内研修を実施する

チェックリストを利用した園内研修を定期的に実施するのも有効です。

単にガイドラインを読むだけではなく、「給食を食べない子どもにはどう声をかけるか」「帰りたくないと泣く子どもにはどう対応するか」など、実際の保育場面をテーマにすると、自分の行動へ置き換えて考えやすくなります。

大阪府も、不適切保育の防止にあたり、職員会議や研修などを通じた教職員への周知や、組織全体で迅速に対応できる体制づくりを求めています。

参照:大阪府「私立幼稚園等における不適切な保育に関する対応について」

保育士の業務負担を減らす

保育士が常に時間に追われている環境では、「早くして」「何回言ったら分かるの」といった強い言葉が出やすくなる可能性があります。

書類作成や保護者連絡、登降園管理など、保育以外の業務を見直し、子どもと落ち着いて向き合える環境を整えることも重要です。

例えばICTシステムを活用して、

  • 登降園時刻の記録
  • 保護者への連絡
  • 欠席・遅刻連絡
  • お知らせの配信
  • 職員間の情報共有

などを効率化できれば、保育士が事務作業に費やす時間の削減につながります。

不適切保育対策というと研修やルール整備に目が向きがちですが、職員に余裕が生まれる業務環境を作ることも、予防策の一つと考えましょう。

ICT化で職員の負担を減らし保護者満足度を上げる

保育園では、子どもへの支援だけでなく、保護者との情報共有や日々の入退室管理も重要な業務です。

こうした業務をデジタル化することで、職員の負担を減らしながら、保護者にとっても「子どもの様子がわかる」「施設に到着したことを確認できる」といった安心につなげられます。

ビヨンド連絡帳

ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。

日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。

保育園において、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。

ビヨンド入退くん

ビヨンド入退くんlp

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。

「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。

安全管理を強化しながら、保護者への安心提供と業務効率化を両立したい場合は、ビヨンド入退くんの導入をぜひご検討ください。

1分で完了!
営業メールなし!

「不適切かも」と感じる保育を見つけた場合はどうする?

同僚の保育を見て違和感を持った場合、一人で抱え込まないことが重要です。

まずは園長や主任など、園内で定められている報告ルートに沿って共有しましょう。

その際、「〇〇先生は怖い」といった印象だけではなく、「○月○日の給食時、〇〇という言葉を3回言っていた」「子どもの腕を引き、廊下まで移動させていた」など、いつ・どこで・誰が・どのような行動をしたのかを可能な限り具体的に整理します。

なお、制度面でも重要な変更があります。

2025年10月1日に施行された改正児童福祉法等により、保育所等の職員による虐待について、虐待を受けたと思われる子どもを発見した人には、都道府県または市区町村へ速やかに通報する義務が設けられました。通報を受けた自治体には事実確認や子どもの安全確保などを行うことが義務付けられています。

そのため、虐待が疑われる重大なケースについては、「まず園内だけで解決してから考える」と抱え込むのではなく、現在の制度や国のガイドラインに沿った対応が必要です。

こども家庭庁は、2026年改訂の「保育所や幼稚園等における虐待防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」で、未然防止から発生時の対応まで整理しています。園長や施設運営者は、あらかじめ確認しておきましょう。

不適切保育チェックリストに関するよくある疑問

チェックリストは国が公開している?

不適切保育の振り返りに使えるものとして広く活用されているのが、全国保育士会「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」です。

複数の自治体でも同チェックリストが紹介・活用されています。園独自のチェック項目を作る場合も、こうした公的資料を基準として活用するとよいでしょう。

チェックリストはどれくらいの頻度で実施する?

法律などで「○か月に1回」と一律に定められているものではありません。

年1回だけ形式的に実施するよりも、定期的な園内研修や職員会議などに組み込み、継続的に振り返れる仕組みにすることが大切です。

また、新年度やクラス替え、職員配置の変更など、保育環境が大きく変わったタイミングで実施する方法もあります。

チェックが一つでもついたら虐待になる?

必ずしもそうではありません。

不適切な関わりや虐待に該当するかどうかについては、行為だけを切り取るのではなく、子どもの状況や職員の状況などを踏まえて総合的に判断する必要があります。

一方、「虐待ではないから問題ない」と放置するのも適切ではありません。

チェックがついた項目について、なぜその関わりが起きたのかを振り返り、より良い関わり方を考えることがチェックリストの重要な役割です。

まとめ|チェックリストを「保育の質を高めるきっかけ」にしよう

不適切保育を防ぐためには、明らかな虐待行為だけでなく、日常の何気ない声かけや関わりにも目を向けることが大切です。

特に保育士自身に悪意がなく、「昔からこうしている」「忙しいから仕方がない」と続いている関わりは、当事者だけでは気付きにくいことがあります。

だからこそ、定期的にチェックリストを使って保育を振り返り、「できていない職員を探す」のではなく、「もっと良い関わり方はないか」を職員全員で考える機会にすることが重要です。

また、チェックの結果から時間的な余裕のなさや人員配置、業務負担などの共通課題が見えてきた場合は、個人への指導だけで終わらせず、園全体の運営方法も見直しましょう。

子どもの人権を守ることはもちろん、保育士自身が落ち着いて子どもと向き合える環境を整えることが、不適切保育を防ぎ、保育の質を高めることにつながります。