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不適切保育の振り返りシートとは?項目例や活用方法、園で取り組む際のポイントを解説

保育の現場では、日々さまざまな場面で判断を求められます。悪意がなくても、忙しさや人手不足、保育者自身の焦りなどによって、子どもの尊厳を損なうような関わりにつながってしまうこともあります。

そこで活用したいのが、不適切保育を防ぐための「振り返りシート」です。

本記事では、不適切保育の振り返りシートに盛り込みたい項目例や活用方法、取り組む際の注意点について、保育園経営者・保育士向けに解説します。

不適切保育の振り返りシートとは?

不適切保育の振り返りシートとは、日頃の子どもとの関わりを振り返り、子どもの人権や尊厳を守った保育ができているかを確認するためのツールです。

代表的なものとして、全国保育士会では「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」を公開しています。

このチェックリストでは、保育者自身が普段の関わりを振り返るとともに、良くないと考えられる関わり方や、より良い関わり方について考えられる構成です。

全国保育士会では、実際にチェックリストを使って自らの保育を振り返ったり、園内で話し合ったりする活用事例も紹介しています。

参考:全国保育士会「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」

なぜ不適切保育の振り返りが重要なのか

不適切保育は、明らかな暴力や暴言だけを指すわけではありません。

たとえば、

  • 子どもの気持ちを聞かずに行動を急かす
  • 「もう赤ちゃんじゃないんだから」など年齢を理由に感情を否定する
  • 食事や着替えを必要以上に強要する
  • 子どもの前で失敗や行動をからかう
  • 特定の子どもだけ頻繁に叱る

といった日常的な関わりについても、子どもの権利や尊厳という視点から見直す必要があります。

こども家庭庁・文部科学省の「保育所や幼稚園等における虐待の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」でも、虐待が発生した後の対応だけでなく、日頃から施設内で虐待を未然に防止するための取り組みを行うことが重視されています。

また、2025年10月1日からは改正児童福祉法等により、保育所等の職員による虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合の通報義務なども設けられました。

大きな問題が発生してから対応するのではなく、日常の小さな違和感を振り返り、改善する仕組みをつくることが重要といえるでしょう。

参考:こども家庭庁「保育所等における虐待防止及び発生時の対応等について」

不適切保育の振り返りシート|項目例

園独自の振り返りシートを作成する場合は、「不適切なことをしていないか」だけでなく、具体的な行動に落とし込んだ項目にすることがポイントです。ここでは、項目例を紹介します。

子どもの気持ちを尊重できているか

まず確認したいのが、子どもの意思や気持ちを尊重した関わりができているかです。

たとえば、次のような項目を設定できます。

振り返り項目チェック
子どもの話を途中で遮らず聞いた□
子どもが嫌がっている理由を確認した□
大人の都合だけで行動を急かさなかった□
子ども自身が選択できる場面をつくった□
「嫌」「やりたくない」という意思を一度受け止めた□

集団生活では、すべてを子どもの希望通りにすることはできません。

しかし、結果的に同じ行動を促すとしても、子どもの気持ちを一度受け止めるかどうかで関わり方は大きく変わります。

威圧的な言葉を使っていないか

忙しい場面ほど注意したいのが、言葉遣いです。次のような項目を入れてみましょう。

振り返り項目チェック
大声で怒鳴らなかった□
「早くして」「何回言ったら分かるの」など強い言葉を繰り返さなかった□
子どもの人格を否定する言葉を使わなかった□
他の子どもと比較しなかった□
子どもを怖がらせて行動させなかった□

「注意すること」と「威圧すること」は異なります。

危険な行動など、その場で止める必要がある場合でも、落ち着いたあとで理由を伝えるなど、子どもが納得できる関わりを意識することが大切です。

子どもを傷つける身体的な関わりをしていないか

身体への関わりについても振り返ります。

振り返り項目チェック
腕を強く引っ張らなかった□
無理やり座らせることがなかった□
身体を押したりしなかった□
必要以上の力で抱えなかった□

ただし、「身体に触れたら不適切」というわけではありません。道路へ飛び出しそうになった子どもを止めるなど、安全確保のために身体的な介入が必要なケースもあります。

そのため、「なぜその行動が必要だったのか」「他の方法はなかったか」まで振り返れる仕組みにするとよいでしょう。

食事・排泄・睡眠を無理強いしていないか

生活場面は、保育者の都合が優先されやすい場面でもあります。

振り返り項目チェック
完食を無理に求めなかった□
食べられないものを無理に口に入れなかった□
排泄を必要以上に急かさなかった□
子どものプライバシーに配慮して着替えや排泄介助をした□
無理やり眠らせようとしなかった□

特に食事や排泄は、子どもの身体そのものに関わります。大人側のスケジュールだけを優先していなかったか振り返ることが重要です。

子どもによって対応を変えていないか

「扱いやすい子」「よく注意が必要な子」など、無意識のうちに子どもへの対応に差が生まれることがあります。

振り返り項目チェック
特定の子どもばかり叱っていない□
特定の子どもを無視していない□
家庭環境や保護者との関係によって対応を変えていない□
発達の特性を理由に一方的に行動を制限していない□
子どもにレッテルを貼るような発言をしていない□

保育士本人には差別する意図がなくても、日頃の積み重ねによって特定の子だけが強く注意される状態になることもあります。個人だけでなく、職員同士で気づいたことを共有する仕組みも必要です。

振り返りシートには「できなかった理由」も記入する

チェックだけで終わらせず、「なぜそのような関わりになったのか」まで考えることが非常に重要です。

たとえば、

「着替えて」と何度も強い口調で言ってしまった

という場面があったとします。

その背景を振り返ると、

次の活動時間が迫って焦っていた
↓
そもそも着替えに必要な時間を短く設定していた
↓
活動スケジュールを10分ずらした方がよいのではないか

というように、個人の問題ではなく園の運営上の改善点が見つかる可能性があります。

不適切保育を「その保育士の性格の問題」だけで処理してしまうと、根本的な改善にはつながりません。

振り返りシートの活用方法

振り返りシートは、配布するだけでは十分な効果を得られません。園全体で運用方法を決めておきましょう。

定期的に実施する

年1回だけでは、日頃の保育を見直す習慣にはつながりにくくなります。「3か月に1回」「園内研修の前」「年度途中と年度末」など、継続的に振り返れる機会を設けるとよいでしょう。

実際に、福島県が実施した幼児教育に関する調査でも、不適切保育防止の取り組みとして「人権擁護のためのセルフチェックリスト」「自己チェックシート」「振り返りシート等を活用した日頃の保育の振り返りや話し合い」などを取り入れている施設が報告されています。

参考:令 和 6 年 度 福 島県 幼 児教育 に 係 る 実 態 調 査

職員同士で話し合う

振り返りシートは、一人で記入して終わるよりも、園内研修などで共有するとさらに有効です。

たとえば、「片付けを嫌がる子どもにどう声をかける?」という一つの事例だけでも、保育士によって対応方法は異なるでしょう。

「私はこうしている」「この子の場合はこうすると切り替えやすい」と共有すれば、不適切保育を防ぐだけでなく、保育技術そのものを高める機会にもなります。

実際に自治体の実践報告でも、自分の保育への悩みや迷いを職員同士で共有することで、関わり方について新たな気づきを得た例が報告されています。

園長・主任も振り返る

不適切保育防止というと、現場の保育士だけがチェックするものと思われがちです。

しかし、「無理のある職員配置になっていないか」「休憩を取れているか」「保育士が相談しやすい環境になっているか」「業務量が多すぎないか」「管理職が威圧的な指導をしていないか」などは、管理職側が振り返る必要があります。

「保育士に注意する」だけではなく、経営者・園長側も改善できる点がないか確認することが大切です。

「次はどうするか」まで考える

振り返りシートには、改善方法を書く欄も設けましょう。

振り返った場面背景次回の対応
子どもに「早くして」と強く言った活動開始時間が迫っていた10分前から片付けを始める
泣いている子に「泣かないの」と言った他児への対応で余裕がなかったまず「悲しかったね」と気持ちを言葉にする
食事を急かした職員配置の都合で片付けを急いでいた食事時間の配置を見直す

このように、事実 → 原因 → 改善という流れで考えると、振り返りを実際の保育改善につなげやすくなります。

不適切保育振り返りシートの注意点

振り返りシートを「反省文」にしてはいけない

振り返りシートを運用する際、特に避けたいのが、「できていない項目が多い人=問題のある保育士」という評価です。

そのような運用をすると、職員は本音を書けなくなります。これでは振り返りシートを導入する意味がありません。

「うまくできなかったことを書ける職場であること」自体が、不適切保育を防ぐために重要です。ミスや迷いを隠すのではなく、「こういう場面で困った」「どう関わればよかったと思う?」と相談できる職場づくりを目指しましょう。

チェック項目は園ごとに見直す

公開されているチェックリストをそのまま使用する方法もありますが、園独自の項目を追加するのもおすすめです。

チェック項目例
  • 過去に保護者から指摘されたこと
  • 職員会議で話題になった場面
  • ヒヤリハットが多い時間帯
  • 園独自の保育方針
  • 新人職員が迷いやすい場面

などをチェック項目に加えます。一般的なチェックリストだけでは、その園特有の課題までは拾えないためです。

一度作って終了ではなく、実際に運用しながら定期的に項目を見直しましょう。

振り返りシートだけで不適切保育を防げるわけではない

振り返りシートは有効な取り組みですが、記入させるだけで不適切保育を完全に防げるわけではありません。

チェック項目例
  • 人員不足が慢性化している
  • 業務量が多すぎる
  • 職員同士で相談できない
  • 園長に意見を言えない
  • 問題を見ても指摘しにくい

といった職場環境があれば、個人に振り返りを求めるだけでは限界があります。

そのため、振り返りシート+園内研修+職員同士の声かけ+管理職による環境改善をセットで考えることが重要です。

こども家庭庁も、不適切な関わりや虐待を未然に防ぐための取り組みとともに、保育現場の負担軽減や巡回支援などを進めています。

参考:こども家庭庁「保育」

保育士が子どもと向き合う時間を増やすことも大切

不適切保育を防ぐためには、研修や振り返りだけでなく、保育士が余裕を持って子どもと関われる環境をつくることも重要です。

連絡帳の記入、登降園管理、保護者への連絡、集計作業などの事務作業に追われれば、保育士が子ども一人ひとりと向き合える時間はどうしても少なくなります。

そのため、ICTシステムを活用して日常業務を効率化するのも一つの方法です。ただし、ICTを導入すれば自動的に不適切保育がなくなるわけではありません。削減できた時間を、子どもとの関わりや職員間の情報共有、保育の振り返りに充てることで、より良い保育環境づくりにつなげられるでしょう。

ビヨンド連絡帳

ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。

日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。

保育園において、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。

ビヨンド入退くん

ビヨンド入退くんlp

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。

「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。

安全管理を強化しながら、保護者への安心提供と業務効率化を両立したい場合は、ビヨンド入退くんの導入をぜひご検討ください。

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まとめ|振り返りシートを「より良い保育を考えるツール」にしよう

不適切保育の振り返りシートは、保育士を監視したり、問題のある職員を探したりするためのものではありません。

日々の保育を客観的に振り返り、「あの場面では別の関わり方もできたかもしれない」と考えるきっかけをつくるものです。

そのためには、

  • 具体的な行動をチェック項目にする
  • できなかった理由まで振り返る
  • 次回の対応方法を考える
  • 職員同士で共有する
  • 園長・主任も職場環境を振り返る
  • 定期的に内容を見直す

といった運用が重要です。

また、現在は保育所等における虐待防止について法整備も進み、2025年10月からは虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合の通報義務も設けられています。

問題が深刻になってから対応するのではなく、日頃から小さな違和感を共有できる職場をつくることが、子どもの権利を守り、不適切保育を防ぐ第一歩となるでしょう。