保育士の給与は、「基本給+各種手当」で構成されているケースが一般的です。
同じような基本給の保育園でも、資格手当や役職手当、住宅手当、処遇改善に関する手当などによって、実際に受け取る給与には差が生じます。
この記事では、保育士に支給される主な手当の種類から、最新の処遇改善等加算、手当を設定する際のポイントまでわかりやすく解説します。
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保育士の手当は大きく3種類
保育士が受け取る手当や給与上の支援は、大きく次の3つに分けて考えるとわかりやすいでしょう。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 保育園独自の手当 | 資格手当、役職手当、住宅手当、通勤手当など |
| 国の制度によるもの | 処遇改善等加算など |
| 自治体による支援 | 独自の給与上乗せ、家賃支援、就職支援など |
すべての保育園で同じ手当が支給されるわけではありません。
時間外労働に対する割増賃金など法律上必要なものを除けば、園独自の手当については、法人や施設によって種類や金額、支給条件が異なります。
そのため保育士が求人を比較するときは、基本給だけでなく、毎月どの手当が、どのような条件で支給されるのかまで確認することが重要です。
保育士に支給される主な手当一覧
保育園で設けられていることが多い手当を見ていきましょう。
資格手当
資格手当は、保育士資格など特定の資格を持っている職員に支給される手当です。
たとえば、「保育士資格保有者に月○円」といった形で設定されます。
ただし、保育士資格を持っているから必ず支給されるわけではありません。資格を前提として採用している施設では、資格手当を設けず、基本給に反映させている場合もあります。
そのため求人票を見るときは、「資格手当あり」という表記だけで待遇の良し悪しを判断するのではなく、基本給を含めた給与総額を見ることが大切です。
役職手当
園長、副園長、主任保育士など、一定の役職を担当する職員に支給されるのが役職手当です。
一般の保育士よりも、シフト管理や職員育成、保護者対応、園運営など責任の大きい業務を担当することへの対価として設けられます。
経営者側は、単に役職名を付けるだけでなく、どの仕事を担当する役職なのか、どの程度の責任があるのか、いくら給与が上がるのかを明確にしておくことが重要です。
住宅手当
住宅手当は、家賃など職員の住居費負担を軽減するために支給される手当です。
「本人名義の賃貸住宅に住んでいる場合のみ」「世帯主のみ」「職場から〇km以内のみ」など、施設によって支給条件が設定されていることがあります。
特に家賃の高い都市部では、住宅関連の支援が求人選びの重要な条件になることもあります。
通勤手当
電車やバスなどを利用して通勤する際の交通費を補助する手当です。
「実費を支給」「月○万円まで」といった上限が定められているケースが一般的です。
車通勤の場合には、距離に応じて交通費を設定している施設もあります。
扶養手当・家族手当
配偶者や子どもなどの扶養家族がいる職員に支給する手当です。
支給の有無や金額、対象となる家族の範囲は法人によって異なります。
特殊業務手当
通常の業務とは異なる、一定の専門性や負担を伴う業務を担当する職員に支給されることがあります。
ただし、「特殊業務手当」という名称や支給対象は施設によって異なります。求人票に記載されている場合には、具体的にどの業務に対して支払われる手当なのかを確認するとよいでしょう。
時間外手当・残業手当
法定労働時間を超えて働いた場合には、時間外労働に対する割増賃金が必要です。
厚生労働省によると、法定労働時間を超えた時間外労働には原則として25%以上、法定休日の労働には35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
「保育士だからサービス残業になる」「行事の準備だから残業に含まれない」といった扱いにはできません。
行事手当
運動会や生活発表会、宿泊行事などを担当した職員に、園独自で手当を支給するケースもあります。
必ず設けなければならない制度ではありませんが、大規模な行事では通常より職員の負担が増えることもあるため、職員の納得感を高める方法の一つでしょう。
担任手当
クラス担任や主担任を担当する職員に、独自の手当を設定している保育園もあります。
特に主担任は、日々の保育だけでなく、指導計画の作成や保護者対応、クラス運営などを担うことがあるため、責任の重さを待遇に反映させることで、役割分担を明確にしやすくなります。
パート保育士でも手当はもらえる?
パート保育士であっても、勤務先の規定や制度上の要件を満たせば手当の対象になる場合があります。
「正社員ではないから手当は一切つかない」とは限りません。
特に時間外労働に対する割増賃金については、厚生労働省も雇用形態にかかわらず適用されると説明しています。
一方、住宅手当や役職手当、園独自の資格手当などについては、「正規職員のみ」「週○時間以上」など支給要件を設けている場合がありますので、求人票や就業規則を確認しましょう。
保育士の「処遇改善手当」とは?
保育士の手当について調べる際、特に目にすることが多いのが「処遇改善手当」です。
一般に処遇改善手当と呼ばれているものには、国の処遇改善等加算が関係しています。
国から保育士個人へ直接お金が振り込まれる制度ではなく、対象となる保育施設に公定価格を通じて加算され、一定のルールに基づいて職員の賃金改善などに充てられる仕組みです。
2025年度から、それまでの処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは一本化され、現在は「区分1~3」として整理されています。
参照:こども家庭庁「子ども・子育て支援制度―処遇改善等加算に関する情報」
区分1|経験に応じた昇給や職場環境を整える
区分1は、職員の経験に応じた昇給の仕組みや、職場環境の改善などを促すための区分です。
施設の平均経験年数などに応じた加算率が設定されています。
単に「毎月○円を全保育士へ支給する」という制度ではなく、職員が経験を積みながら継続的に処遇が上がる仕組みづくりを支えるものと考えるとわかりやすいでしょう。
区分2|職員全体の賃金改善
区分2は、施設で働く職員の賃金改善を行うための区分です。
2025年度以降の制度では、以前の処遇改善等加算Ⅰの賃金改善要件分と、処遇改善等加算Ⅲにあたる部分が整理・統合されています。そのため、以前の制度を知っている人は名称の違いに注意しましょう。
区分3|技能・経験に応じた賃金改善
区分3は、一定の技能や経験を持つ職員のキャリアアップと賃金改善を目的としています。
副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーなどの役割と関連する仕組みです。
経験を積んでも給与がほとんど変わらない状態では、ベテラン職員の離職につながりかねません。区分3は、こうした課題に対して「役割や専門性の向上を賃金にも反映する」ことを目的とした制度といえます。
自治体独自の保育士手当も
保育士不足への対策として、独自の支援を実施している自治体もあります。
- 保育士の給与への上乗せ
- 家賃・宿舎費の支援
- 就職時の支援金
- 奨学金返済の支援
- 保育料の補助
特に自治体をまたいで転職する場合には、同程度の基本給でも、自治体の支援制度によって実質的な待遇が変わる可能性があります。
ただし、自治体制度は年度ごとに変更されることもあるため、「以前は○万円もらえた」という情報だけで判断せず、必ず自治体公式サイトで最新情報を確認しましょう。
2026年度も保育士の処遇改善は続いている
2026年度も、保育士等の処遇改善は国の重要な施策となっています。
こども家庭庁の「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」では、令和7年度補正予算で措置された公定価格上の人件費+5.3%の改善を引き続き確保するとされています。
ただし、これは「すべての保育士の給料が一律5.3%アップする」という意味ではありません。公定価格上の人件費に関する改善であり、実際の給与への反映方法や金額は施設の賃金制度などによって異なります。
「国が5.3%上げた=自分の月給がそのまま5.3%増える」と考えないよう注意しましょう。
参照:こども家庭庁「令和8年度公定価格・基準等の見直し事項」
手当だけでなく保育士宿舎借り上げ支援事業もチェック
住宅関連では、園独自の住宅手当だけでなく、国と自治体が実施する保育士宿舎借り上げ支援事業を利用できる場合があります。
これは保育事業者が保育士のために宿舎を借り上げる費用を支援する制度です。ただし、住宅手当のように「職員へ毎月現金を支給する制度」とは仕組みが異なります。
また、実施の有無や補助額、対象となる保育士、利用できる期間などは自治体によって異なるため、勤務する自治体の最新条件を確認する必要があります。
「処遇改善手当がもらえない」と感じるのはなぜ?
「ほかの園では処遇改善手当が出ているのに、自分の給与明細には書かれていない」と疑問に感じる保育士もいるでしょう。
この場合、給与明細に「処遇改善手当」という項目がないだけで、直ちに処遇改善が行われていないとは限りません。賃金改善の反映方法には、基本給への上乗せや毎月の手当などがあります。
そのため確認するときは、自分の勤務先が処遇改善等加算の対象になっているか、どのような方法で給与へ反映しているか、支給対象や配分ルールはどうなっているかなどを整理するとよいでしょう。
保育園側も、「国の制度だから職員も分かっているだろう」と考えず、給与体系や処遇改善の考え方を職員へ説明しておくことが大切です。
保育士が求人票で確認したい「手当」のポイント
転職先を選ぶ際には、単純に「手当が多い園」を選べばよいわけではありません。
たとえば、
A園
基本給:20万円
手当:5万円
月給:25万円
B園
基本給:23万円
手当:2万円
月給:25万円
であれば、どちらも毎月の支給額は25万円です。
しかし、賞与や昇給、退職金などの算定基礎が基本給に連動する職場では、その後の待遇に差が出る可能性があります。
求人を見るときは、次のような点まで確認するとよいでしょう。
- 基本給はいくらか
- 毎月必ず支給される手当はいくらか
- 条件付きの手当は何か
- 処遇改善分はどこに含まれているか
- 固定残業代が含まれていないか
- 賞与は何を基準に計算されるか
- 昇給制度があるか
「月給25万円」だけを見るのではなく、その25万円が何で構成されているのか、何に影響するのかを見ることが重要です。
保育園経営者が手当を設定するときのポイント
手当は、採用ページを豪華に見せるためだけのものではありません。
設計の仕方によっては、職員の定着やモチベーション向上にもつながります。
手当の目的を明確にする
まず、「なぜその手当を設けるのか」を明確にしましょう。
- 主任手当→責任ある役職への対価
- 資格手当→専門性を評価する
- 担任手当→クラス運営責任への対価
- 住宅手当→遠方からの採用を促進する
理由が明確であれば、職員側も支給基準を理解しやすくなります。
条件を複雑にしすぎない
「○年以上勤務し、○資格を持ち、○業務を担当し、月○時間以上勤務した場合……」と条件が複雑になると、職員自身も自分が対象なのか把握できなくなります。
可能な限りシンプルな制度にし、就業規則や給与規程に明確に記載しておきましょう。
責任だけ増やさない
「リーダーになれば仕事は増えるのに、給与はほとんど変わらない」という状態では、職員がキャリアアップを望まなくなる可能性があります。
役職や担当業務を増やすのであれば、それに見合った処遇もセットで考える必要があります。
求人では「月給」だけでなく内訳を伝える
求職者に安心して応募してもらうためには、「月給24万円~」だけでなく、「基本給21万円+資格手当1万円+処遇改善手当2万円」など、可能な範囲で内訳を提示するとわかりやすくなります。
手当の透明性が高い方が、応募する側も安心です。
手当を増やすだけで離職対策になるとは限らない
給与や手当は、保育士が働き続けるうえで重要な条件です。
一方で、数千円の手当を増やしたとしても、持ち帰り仕事が多い、残業が常態化している、書類作業に時間がかかる、希望休を取りにくいといった状態では、十分な定着対策にならない可能性があります。賃金改善と同時に、業務そのものを見直すことも重要です。
たとえば保護者への連絡、出欠確認、登降園管理など、これまで紙や電話で行っていた業務をICT化(デジタル化)すれば、日々の事務作業を減らせることがあります。
「給与を上げること」と「働きやすくすること」の両方から処遇改善を考えることが、人材確保や離職防止につながります。
ICT化で職員の負担を減らし保護者満足度を上げる
保育園では、子どもへの支援だけでなく、保護者との情報共有や日々の入退室管理も重要な業務です。
こうした業務をデジタル化することで、職員の負担を減らしながら、保護者にとっても「子どもの様子がわかる」「施設に到着したことを確認できる」といった安心につなげられます。
ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。
日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。
保育園において、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。
ビヨンド入退くん

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。
「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。
安全管理を強化しながら、保護者への安心提供と業務効率化を両立したい場合は、ビヨンド入退くんの導入をぜひご検討ください。
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まとめ
保育士には、資格手当や役職手当、住宅手当、通勤手当など、さまざまな手当が設けられています。
さらに、国の処遇改善等加算や自治体独自の支援制度が給与や待遇に関係することもあります。
ただし、名称が同じ手当でも支給額や条件は施設によって異なります。
保育士が勤務先や転職先を比較するときは、「手当があるか」だけではなく、基本給・支給条件・給与総額まで確認することが大切です。
一方、保育園経営者にとって手当は、職員の専門性や責任を適切に評価し、長く働いてもらうための仕組みでもあります。
手当の目的と支給基準を明確にするとともに、ICT化などによる業務負担の軽減も進め、給与面と働きやすさの両方から職員の処遇改善を進めていきましょう。




