「クラスの中に、常に個別の声かけが必要な子がいる」
「集団活動から離れてしまうことが多く、職員が一人付き添っている」
「この状態なら加配保育士をつけたほうがいいのだろうか?」
保育現場では、このように加配を検討する場面があります。
この記事では、保育園で加配をつけるレベルの目安や、対象となりやすい子どもの様子、加配を検討するときの流れについて解説します。
保育園の「加配」とは?
保育園における加配とは、通常の保育士配置に加えて、障害や発達上の特性などによって特別な支援を必要とする子どもに対応するため、職員を追加配置することです。
国も障害のある子どもの保育所への受け入れを促進しており、障害児保育のための保育士等の加配について地方交付税による財政措置を行っています。
誰が担当するの?
加配保育士という独立した資格が存在するわけではなく、通常は保育士などがその役割を担当するのが一般的です。
クラス担任とは別に保育士を配置し、活動への参加をサポートしたり、食事・着替え・移動などを手助けしたりします。
保育園で加配をつけるレベルに全国共通の基準はない
「どのくらい発達が遅れていたら加配になるのか」と気になる方も多いでしょう。
しかし、加配をつけるレベルには全国一律の判定基準がありません。
こども家庭庁の「障害児保育の財政支援および受入れ方策等に関する調査研究」では、財政支援を行っている自治体のうち、41.3%が「子ども一人ひとりの特性・状態に合わせて加配人数を決めている」と回答しています。
一方で、「子ども2人に対して加配保育士1人など人数基準を定めている自治体」「障害の程度によって1対1・2対1などを決めている自治体」「基準を設けつつ個別に柔軟な対応を行っている自治体」などもあり、運用方法はさまざまです。
そのため、園だけで「この子は加配対象」と決めつけるのではなく、子どもの状態を整理したうえで自治体の担当部署へ確認することが重要です。
参考:障害児保育の財政支援および受入れ方策等に関する調査研究|こども家庭庁
保育園で加配を検討するレベルの目安
では、実際の保育現場では、どのような状態になったら加配を検討すればよいのでしょうか。
一つの目安になるのが、「その子を安全に保育するため、通常の配置とは別に職員一人が継続的に対応する必要があるか」という視点です。
具体的には、次のようなケースが考えられます。
集団での指示だけでは活動することが難しい
「みんなで手を洗いましょう」「帽子をかぶって園庭へ行きましょう」といった一斉の声かけだけでは行動に移れず、毎回個別に声をかけたり、一緒に行動したりする必要があるケースです。
もちろん、幼児期は一度の指示で動けないことも珍しくありません。
判断するときは、単に「指示を聞かない」という一場面だけを見るのではなく、年齢や発達段階と比較して、どの程度継続的な個別支援を必要としているかを見ることが大切です。
集団活動から離れてしまうことが多い
朝の会や制作、散歩などの集団活動から頻繁に離れてしまう場合も、加配を検討するきっかけになります。
特に、「部屋から飛び出してしまう」「園外活動中に一人で別方向へ行こうとする」「職員が常にそばについていなければ安全を確保できない」といった状況では、安全管理の面からも人員体制を見直す必要があります。
気持ちの切り替えに継続的な個別支援が必要
遊びから食事、園庭から保育室など、活動の切り替えが極端に難しい子どももいます。
予定の変更などをきっかけに強く混乱し、落ち着くまで職員が長時間付き添う状態が頻繁にある場合には、クラス全体を担当する保育士だけでは対応が難しくなることがあります。
加配によって「次は給食だよ」と事前に伝えたり、絵カードなどで見通しを示したりすることで、子ども自身も安心して活動しやすくなることがあります。
身の回りの動作に継続的な介助が必要
食事、排泄、着替え、移動などについて、その子の年齢から考えて継続的な介助が必要な場合にも、加配が検討されることがあります。
ただし、「着替えが遅いから加配」という単純なものではありません。
複数の生活場面で職員が付き添う必要があり、その間クラス全体の保育が難しくなっているかという視点で考える必要があります。
他児または本人の安全確保のため継続的な見守りが必要
衝動的に道路へ飛び出そうとする、遊具から突然飛び降りようとする、自分やほかの子どもを傷つけてしまうことが繰り返されるなど、安全面で個別の見守りが必要なケースもあります。
この場合、「困った行動を止めるために加配する」という考え方ではなく、なぜその行動が起きているのかを理解し、本人が安全に過ごせる環境をつくるための支援として考えることが重要です。
感覚過敏などへの個別対応が必要
大きな音や人混み、照明、食感などへの強い苦手さがあり、通常の保育環境では強い負担を感じる子どももいます。
たとえば行事や集団活動の際に別室で休憩したり、静かな場所へ移動したりする必要があり、そのたびに職員が付き添う場合があります。
環境調整だけでは対応しきれず、個別対応が継続して必要であれば、人員配置を含めて検討するとよいでしょう。
「発達障害の診断がある=必ず加配」ではない
加配という言葉から「発達障害のある子どもにつく先生」というイメージを持つ方もいるでしょう。
しかし、診断名だけで加配の必要性が決まるとは限りません。
たとえば同じ自閉スペクトラム症(ASD)の診断がある子どもでも、園生活でほとんど個別支援を必要としない子もいれば、継続的な支援を必要とする子もいます。反対に、診断がついていなくても、集団生活で大きな困難があり、加配の対象になる自治体もあります。
実際、松本市では加配保育士配置の要件として、手帳を持つ子どもだけでなく、診断名の有無にかかわらず成長発達について医療機関を受診している子どもや、専門機関へ相談している子どもも挙げています。
つまり、「診断の有無」だけを見るのではなく、実際の園生活でどのような支援が必要なのかを見ることが重要です。
発達障害グレーゾーンでも加配の対象になる?
自治体の制度によっては、いわゆる「発達障害グレーゾーン」の子どもが加配やそれに類する支援の対象になる場合もあります。
特に、「診断はないものの発達について専門機関へ相談している」「集団保育では個別対応が必要」
「園と自治体の巡回相談等で支援が必要と判断された」といった場合です。
一方、診断書・意見書・障害者手帳などを申請要件としている自治体もあります。そのため、「診断がないから加配は無理」「グレーゾーンなら必ず加配できる」とは一概に言えません。
まずは自治体の障害児保育・発達支援・保育担当部署などへ確認しましょう。
加配保育士は必ず1対1でつくわけではない
「加配」と聞くと、子ども一人に保育士一人が常に付き添う姿を想像するかもしれません。
しかし、必ずしも1対1とは限りません。
国は障害児保育について、おおむね障害児2人につき保育士1人を標準としながら、子どもの状況等に応じて適切に職員を配置することが望ましいとしています。
自治体によっては、
| 支援の必要性 | 配置例 |
|---|---|
| 常時個別の介助・見守りが必要 | 子ども1人:保育士1人 |
| 一部の活動で個別支援が必要 | 子ども2人:保育士1人 |
| 必要な場面を中心に支援 | 子ども3人:保育士1人 |
といった考え方を設けていることがあります。
ただし、これはあくまでイメージです。実際の配置基準や補助制度は自治体ごとに確認してください。
たとえばさいたま市では、一定の条件を満たす民間認可保育所等について、園児2人に保育士1人を加配する場合と、園児1人に保育士1人を加配する場合で異なる助成を行っています。
園側が加配を検討するときの5つのチェックポイント
「気になる行動がある」というだけでは、加配が必要かどうか判断することは難しいでしょう。
そのため、園内では次の5点を整理してみることをおすすめします。
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| 頻度 | 週1回なのか、毎日何度も起きるのか |
| 支援時間 | 数分の声かけで済むのか、長時間付き添うのか |
| 安全面 | 本人や他児に危険が生じる可能性があるか |
| 集団保育への影響 | 一人が対応するとクラス全体を見る職員が不足するか |
| 環境調整の効果 | 声かけや環境変更などで改善するか |
特に重要なのは、「困った行動があるか」ではなく「どのくらい人の支援を必要としているか」を見ることです。
たとえば同じ「朝の会に参加できない」という状況でも、一人で静かに遊びながら安全に過ごせる子と、職員が一人付き添わなければ部屋から飛び出してしまう子では必要な人的支援が異なります。
加配を検討するときは記録を残す
加配について自治体や保護者へ相談するとき、「なんとなく大変です」だけでは子どもの状況が伝わりにくくなります。
そこで、日々の保育の中で、「いつ」「どのような場面で」「どのような様子があったか」「保育士がどのように対応したか」「対応にどの程度時間がかかったか」「どのような支援をすると落ち着いたか」などを記録しておきましょう。
記録を蓄積すると、「給食前の切り替え時に起きやすい」「大人数になると混乱しやすい」といった傾向も見つけやすくなります。
これは加配の必要性を説明するためだけでなく、その子に合った支援方法を考える材料にもなります。
保護者に加配を提案するときの伝え方
園側が加配を必要だと感じても、保護者にとっては「加配をつけたい」という言葉が大きなショックになる場合があります。
特に、「うちの子はそんなに発達が遅れているの?」「障害があると思われているの?」
「ほかの子と分けられるの?」と感じることもあるでしょう。
そのため、「○○ちゃんは問題行動が多いので加配が必要です」と伝えるのではなく、子どもが園生活で困っている具体的な場面と、支援によってどう過ごしやすくなるのかをセットで説明することが重要です。
たとえば、「園庭からお部屋に戻るときに気持ちを切り替えるのが難しくて、○○ちゃん自身がつらそうな場面があります。先生がそばで次の予定を伝えると落ち着いて移動できるので、もう少し丁寧に関われる体制を考えたいと思っています」といった伝え方です。
「園が楽になるため」ではなく、「子どもが安心して過ごすための支援」だと共有することが大切です。
加配保育士を配置する際の注意点
加配をつければすべて解決するわけではない
加配保育士を配置すること自体が目的にならないよう注意しましょう。
「加配の先生がいるから、その子のことは任せればいい」という体制になってしまうと、子どもが特定の保育士としか関われなくなったり、クラスから孤立したりする可能性があります。
加配保育士の役割は、子どもを常に集団から切り離して1対1で保育することではありません。
その子が必要な支援を受けながら、できる活動には自分で参加する、ほかの子どもと関わる、少しずつ支援なしでできることを増やすといった経験を重ねられるようサポートすることが大切です。
担任・加配保育士・園長などで支援方法を共有し、園全体で関わっていきましょう。
加配が必要か迷ったら外部機関とも連携する
園内だけでは判断が難しい場合、自治体の巡回相談や発達支援機関などを活用する方法もあります。
第三者に保育中の様子を見てもらうことで、「環境を変えれば現在の人員でも対応できそう」「この場面では個別支援が必要」「専門機関とも連携したほうがよい」など、園内だけでは気づきにくい視点を得られることがあります。
加配の申請方法や利用できる補助制度についても自治体によって異なるため、子どもの支援を検討し始めた段階で自治体へ相談しておくとスムーズです。
「その子専属の先生」にしすぎない
1対1の加配が認められている場合でも、常に隣で行動を指示することが必ずしも適切とは限りません。
一人でできる場面では少し距離を取り、必要な場面だけ支援するなど、子どもの発達に合わせて関わり方を調整しましょう。
支援方法を職員間で統一する
保育士によって、「泣いたら活動をやめさせる」「最後まで参加させる」など対応が大きく異なると、子どもが混乱してしまうことがあります。
どのような場面で、どのような支援をするのかを記録し、職員間で共有しましょう。
定期的に支援の必要性を見直す
子どもは成長します。
入園時には多くの個別支援が必要だったとしても、園生活に慣れたり支援方法が確立されたりすることで、一人でできることが増える可能性があります。反対に、進級によって集団活動が増え、新たな支援が必要になることもあります。
「一度加配をつけたからそのまま」ではなく、定期的に支援内容を見直すことが大切です。
加配保育士の確保が難しいことも保育現場の課題
加配が必要だと判断できても、実際には人材を確保できない園もあります。
こども家庭庁の調査では、障害児の受け入れに課題がある施設について、「対応可能な保育士等の数が不足している」「受入れに必要な加配保育士等を配置できていない」という回答がそれぞれ62.5%に上りました。
つまり、加配の問題は「対象となる子どもの判定」だけではありません。
保育士不足が続く中では、必要な人員を確保すること、既存職員の業務負担を減らすこと、ICTなどで保育以外の業務を効率化することも、支援を必要とする子どもを受け入れるための重要な環境整備になります。
参考:障害児保育の財政支援および受入れ方策等に関する調査研究|こども家庭庁
ICT化で職員の負担を減らし保護者満足度を上げる
保育園では、子どもへの支援だけでなく、保護者との情報共有や日々の入退室管理も重要な業務です。
こうした業務をデジタル化することで、職員の負担を減らしながら、保護者にとっても「子どもの様子がわかる」「施設に到着したことを確認できる」といった安心につなげられます。
ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。
日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。
保育園において、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。
ビヨンド入退くん

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。
「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。
安全管理を強化しながら、保護者への安心提供と業務効率化を両立したい場合は、ビヨンド入退くんの導入をぜひご検討ください。
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まとめ|加配をつけるレベルは「必要な個別支援の量」で考えよう
保育園で加配をつけるレベルには、全国一律の明確な基準があるわけではありません。
「発達障害の診断があるか」「ほかの子より発達が遅れているか」だけで判断するのではなく、園生活の中でどの程度継続的な個別支援を必要としているかを見ることが重要です。
特に、職員一人が長時間個別対応することでクラス全体の保育が難しくなっていたり、本人や他児の安全確保のため継続的な見守りが必要だったりする場合には、加配を含めた保育体制を検討する一つのタイミングといえるでしょう。
ただし、認定要件や申請方法、職員の配置割合、補助制度などは自治体によって異なります。
日々の子どもの様子や必要な支援を記録し、保護者や自治体、専門機関とも連携しながら、その子が安心して園生活を送れる体制を考えていきましょう。



