「保育士1人で、こんなに多くの子どもを見るのは無理があるのでは?」
実際に保育現場で働いていると、国が定める保育士の配置基準に対して「おかしい」「現場の実態に合っていない」と感じることもあるでしょう。
この記事では、2026年現在の保育士配置基準を確認したうえで、「おかしい」と言われる理由や近年の改善状況、保育園側でできる対策について解説します。
そもそも保育士の配置基準とは?
保育士の配置基準とは、子どもの年齢や人数に応じて、最低何人の保育士を配置しなければならないかを定めた基準です。
認可保育所の場合、国が最低基準を定めており、自治体によっては国よりも厳しい独自の配置基準を設けている場合があります。
2026年現在、国が定める主な基準は次のとおりです。
| 子どもの年齢 | 配置基準 |
|---|---|
| 0歳児 | 子ども3人につき保育士1人 |
| 1・2歳児 | 子ども6人につき保育士1人 |
| 3歳児 | 子ども15人につき保育士1人 |
| 4・5歳児 | 子ども25人につき保育士1人 |
2024年度には、3歳児が「20対1」から「15対1」、4・5歳児が「30対1」から「25対1」へと改善されました。特に4・5歳児の基準改正は、制度創設以来約76年ぶりの見直しでした。
ただし、ここで注意したいのが「新しい基準に変わった=全国すべての園がすでにこの人数で運営している」というわけではない点です。
3歳児については、人材確保が困難な場合などに従来の20対1を認める経過措置があり、2026年度の見直しによって、この経過措置は2027年度末(2028年3月31日)までとされています。実際には15対1以上を実現している施設の割合は、2024年3月の94.3%から2025年7月には97.2%まで上昇しています。
また、4・5歳児についても、保育人材の確保が難しい施設への配慮から、当分の間は従来の30対1による運営も妨げないとする経過措置が設けられています。
つまり、法律上の新しい基準と、実際の保育現場の配置にはまだ差が残っているのです。
参考:こども家庭庁「保育」
保育士の配置基準が「おかしい」と言われる理由
配置基準は少しずつ改善されています。それでもなお、保育士から「おかしい」「人数が足りない」と言われるのはなぜなのでしょうか。
配置基準は「余裕をもって保育できる人数」ではない
まず知っておきたいのが、配置基準は理想的な保育をするための推奨人数ではなく、施設が満たすべき最低ラインだということです。
たとえば4・5歳児25人に対して保育士1人という基準を満たしていたとしても、1人で25人を常に問題なく保育できるとは限りません。
子ども同士のトラブルが発生することもあれば、
- トイレに行く子どもがいる
- けがをした子どもへの対応が必要になる
- 着替えを手伝う
- 保護者への連絡が必要になる
- 発達面で個別のフォローが必要な子どもがいる
といった状況が同時に発生することもあります。
「法律上必要な人数」と「現場が余裕を持って保育できる人数」は必ずしも同じではありません。
ここが、配置基準に対して現場が違和感を覚えやすい大きな理由です。
子どもの人数だけでは保育の大変さを測れない
同じ「4歳児25人」でも、クラスによって保育士に必要なサポート量は大きく異なります。
たとえば、発達上の特性から個別対応が必要な子どもがいるクラスと、比較的集団活動が安定しているクラスでは、同じ人数でも保育士の負担は変わりますし、年度初めと年度末でも状況は異なります。
進級したばかりの4月には、新しい環境に慣れず泣いたり不安定になったりする子どももいる一方、年度末には身の回りのことを自分でできる子どもが増えている場合もあるでしょう。
しかし基本的な配置基準は、「そのクラスの子どもがどの程度個別支援を必要としているか」までは細かく反映していません。単純な人数だけで必要な保育士数を決めることには限界があります。
保育以外の仕事が多い
保育士の仕事は、子どもを見守ることだけではありません。
日案・週案などの保育計画の作成、連絡帳、保育記録、保護者対応、行事準備、制作物、会議、研修など、多くの業務があります。配置基準上は保育士が足りていても、誰かが事務作業を行えば、その時間は実質的に保育から抜けることになるでしょう。
さらに休憩や有給休暇、研修なども考慮しなければなりません。
そのため、「配置基準上は足りているのに、なぜか毎日人手不足」という状態が起こりやすいのです。
休憩や欠勤によって簡単にギリギリになる
保育園は長時間開所している施設も少なくありません。
たとえば7時から19時まで開園している場合、1人の保育士が12時間連続で勤務するわけにはいかないため、早番・中番・遅番などでシフトを組む必要があります。
さらに、
- 職員の休憩
- 有給休暇
- 研修
- 体調不良による欠勤
- 産休・育休
なども発生します。
園全体では十分な人数を採用しているつもりでも、時間帯によっては配置がギリギリになる場合があります。
配置基準を考える際には、「在籍している保育士の人数」だけではなく、各時間帯に実際に何人配置できるかを見る必要があります。
保育に求められる役割が増えている
現在の保育園には、単に子どもを預かるだけではなく、さまざまな役割が求められています。
たとえば、保護者への子育て支援、虐待や不適切な養育の早期発見、食物アレルギーへの対応、発達支援、事故防止などです。
こども家庭庁も、待機児童対策による「保育の量」の拡大だけでなく、今後は保育の質や安全・安心な環境を確保する必要があるとしています。
保育士に求められる役割が増えているにもかかわらず、人員配置が十分に増えなければ、現場の負担感が強くなるのは自然なことです。
以前の保育士配置基準はさらに厳しかった
日本の保育士配置基準は長い間ほとんど変わっていませんでした。
特に4・5歳児については、長年「子ども30人に対して保育士1人」という基準でした。
2024年度からようやく、30対1 → 25対1へと変更されています。こども家庭庁は、この4・5歳児の改善について「制度発足以来75年間一度も改善されてこなかった」と説明しています。
一方、3歳児については以前から15対1の配置を行う園への加算制度があり、2024年度から最低基準そのものも20対1から15対1へ改められました。その意味では、近年ようやく国も「最低限配置する人数そのものを見直す」という方向へ進み始めたといえます。
配置基準が改善されたのに「変わった気がしない」のはなぜ?
制度上は配置基準が改善されているにもかかわらず、現場では「人が増えた実感がない」というケースもあります。その理由の一つが経過措置です。
4・5歳児については新しい基準が25対1になったものの、人材確保が困難な現場への影響を考慮し、従来の30対1による運営も一定期間認められています。
また、基準が変わったからといって、保育士をすぐ採用できるとは限りません。国が配置基準を一気に厳しくすると、基準を満たしたくても保育士を採用できないという施設が出てくる可能性があります。
実際、こども家庭庁も、最低基準を引き上げればすべての施設が必要人数を確保しなければならず、保育現場に混乱が生じる可能性があるとして、段階的に配置改善を進めてきました。
そのため現在は、基準を改善する → 加算などで人員配置を促す → 保育士を確保する → 段階的に新基準へ移行するという方法が取られています。
1歳児の配置基準はどうなる?
配置基準の中でも特に今後の改善が注目されているのが1歳児です。
現在の最低基準では、1・2歳児は原則として子ども6人に対して保育士1人となっています。
一方、政府は1歳児について6対1から5対1へ改善する方針を示しています。
2025年度からは「1歳児配置改善加算」が設けられ、一定の条件を満たした施設で1歳児を5対1以上の配置に改善した場合、公定価格上の加算を受けられる仕組みが導入されました。
ただし、現時点では全国の最低基準そのものが一律に5対1になったわけではありません。現在は、最低基準は6対1のまま、5対1に改善する園を加算によって後押ししている段階と考えると分かりやすいでしょう。
参考:こども家庭庁「保育」
「25対1でも多すぎる」という意見もある
4・5歳児について30対1から25対1へ改善されたことは大きな前進です。しかし、保育関係団体からは「25対1でも十分ではない」という意見も出ています。
こども家庭庁の子ども・子育て支援等分科会では、全国保育協議会・全国保育士会の委員から、25対1や1歳児5対1が本当に適切な数字なのか、子どもの発達や現在の保育環境を踏まえてエビデンスに基づき検証すべきだという意見が示されています。
また、別の委員からは、年長児について15対1程度の配置を求める意見も出ています。
つまり、30対1から25対1になったから配置基準問題は解決したというわけではありません。
今後も実際の保育現場や子どもの発達、安全性などを検証しながら、適切な人数を検討していく必要があります。
保育園経営者にとっても「人を増やせば解決」ではない
保育士側から見ると「もっと人を配置してほしい」と感じるのは当然です。一方で、保育園経営者からすると、単純に職員を増やすことが難しい事情もあります。
保育士を採用できない
配置基準を改善するためには、まず保育士を確保しなければなりません。しかし、求人を出しても応募が集まらなかったり、採用できても短期間で離職してしまったりする施設もあります。
国が基準を段階的に引き上げている理由の一つも、人材確保の問題が理由です。「もっと配置したいが、そもそも採用できる保育士がいない」という施設も少なくありません。
人件費を無制限に増やせるわけではない
保育園の収入は、一般企業のように自由にサービス価格を設定して増やせるわけではありません。認可保育所などでは、子どもの人数や年齢、施設の規模、各種加算などをもとに算定される公定価格が経営の大きな基盤となります。
そのため、配置基準以上に多くの保育士を採用すれば安全性や保育の質は高まりやすい一方、人件費も増加します。必要な職員数と経営の持続可能性を両立させなければならない点は、保育園経営の難しいところです。
だからこそ国の配置基準改善では、単に「保育士を増やしてください」と求めるだけでなく、公定価格の加算措置もあわせて設けられています。
配置基準がすぐに大幅改善できない難しさ
「25人では多すぎるなら、15人や10人にすればよい」と考えることもできます。しかし、全国一律の最低基準を急激に引き上げれば、必要となる保育士の人数も一気に増えます。
採用できなければ、「定員を減らす」「新規入園を制限する」「クラスを維持できなくなる」といった問題が起こる可能性があります。
その結果、待機児童が再び増えてしまえば、保護者が保育園を利用できないという別の問題も発生します。
つまり配置基準の問題には、
- 子どもの安全
- 保育の質
- 保育士の働きやすさ
- 保育士不足
- 保育園経営
- 保育の受け皿確保
という複数の課題が絡んでいます。
配置基準だけを変更すればすべて解決するわけではなく、処遇改善や採用支援、業務効率化などを同時に進める必要があります。
保育園側ができる配置基準以上の対策
国の最低基準をすぐ変えることは施設側にはできません。
しかし、園内の運営方法を見直すことで、保育士の負担を軽減できる場合があります。
実際の業務量に合わせて人員を配置する
配置基準を満たしているかだけでなく、「どの時間帯に業務が集中しているか」を見ることが重要です。
たとえば登園が集中する朝、昼食、午睡準備、降園が集中する夕方などは、職員の負担が大きくなりやすい時間帯です。園児数だけではなく、業務量を基準にシフトを見直すことで負担を軽減できる場合があります。
フリー保育士を活用する
可能であれば、特定のクラスを固定で担当しないフリー保育士を配置する方法もあります。
職員の休憩や欠勤、保護者対応、子どものけがなどが発生した際にフォローへ入れる人員がいるだけでも、現場の安定性は大きく変わります。「最低人数ぴったり」でシフトを組むのではなく、突発的な出来事に対応できる余白を作ることが重要です。
保育士でなくてもできる仕事を分担する
掃除や消毒、事務作業、備品管理など、保育士資格がなければできない仕事ばかりではありません。
保育補助者や事務スタッフなどに業務を分担すれば、保育士が子どもと向き合う時間を確保しやすくなります。
単純に「保育士を何人増やすか」だけではなく、保育士がやるべき仕事そのものを整理する視点も必要です。
ICTを活用して事務作業を減らす
保育士の負担を減らすうえでは、ICTによる業務効率化も有効です。
たとえば、以下の作業をデジタル化すれば、紙への転記や電話対応などの作業を減らせる可能性があります。
- 登降園管理
- 保護者からの欠席連絡
- 連絡帳
- お知らせ配信
- 保育記録
実際、1歳児を5対1へ改善する「1歳児配置改善加算」でも、ICT活用が要件の一つとされています。具体的には、登降園管理に加えて、計画・記録、保護者連絡、キャッシュレス決済など一定のICT活用が求められています。
人材不足の中では、単純な増員だけではなく、限られた職員が保育に集中できる環境を作ることも重要です。
ICT化で職員の負担を減らし保護者満足度を上げる
保育園では、子どもへの支援だけでなく、保護者との情報共有や日々の入退室管理も重要な業務です。
こうした業務をデジタル化することで、職員の負担を減らしながら、保護者にとっても「子どもの様子がわかる」「施設に到着したことを確認できる」といった安心につなげられます。
ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。
日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。
保育園において、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。
ビヨンド入退くん

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。
「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。
安全管理を強化しながら、保護者への安心提供と業務効率化を両立したい場合は、ビヨンド入退くんの導入をぜひご検討ください。
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まとめ
保育士の配置基準が「おかしい」と言われる背景には、単純に人数が少ないという問題だけではありません。
配置基準はあくまで最低ラインであり、保育以外の事務作業や休憩、欠勤、個別支援が必要な子どもへの対応などを考えると、基準どおりの人数だけでは余裕がなくなるケースがあります。
国も課題を認識しており、2024年度には3歳児を20対1から15対1、4・5歳児を30対1から25対1へ改善しました。また、1歳児についても2025年度から5対1の配置を促す加算制度が始まっています。
一方で、保育士不足のなかで急激に配置基準を引き上げれば、施設側が必要な人材を確保できないという問題もあります。
今後は配置基準そのもののさらなる改善とともに、処遇改善、人材確保、業務分担、ICT化などを組み合わせ、保育士が子ども一人ひとりと向き合える環境を作っていくことが重要になるでしょう。




