塾を経営すると、さまざまなリスクにより多額の損害賠償責任の請求がされる場合があり、塾の運営ができなくなる可能性もあります。
塾の経営には、生徒のケガや設備の破損などのリスクがあるため、万が一に備えて保険の加入を検討しましょう。この記事では、塾の保険の種類や保険料の仕組みや注意点を解説します。塾の保険に加入する際は、ぜひ参考にしてください。
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塾の保険に必要な補償
学習塾には日々たくさんの従業員や生徒が集まり、それぞれの個人情報を扱うため、様々なリスクがあります。
賠償責任
塾に賠償責任が発生した場合と、塾に通う生徒側に賠償責任が発生した場合に保険で補償することです。
例えば、塾の設備の老朽化によって生徒がケガをすると塾側に賠償の責任が発生し、生徒同士のトラブルで持ち物が壊れると生徒側に賠償責任が発生します。賠償責任補償の対象は、塾の経営者と生徒の両方です。
傷害補償
塾の管理下にある間や塾と生徒の自宅の往復で、生徒がケガをしたり交通事故にあったりした場合に補償することです。
例えば、生徒が塾から自宅へ帰る途中、自転車で転倒してケガをすると、補償の対象になります。ただし、塾に通う経路が著しく逸脱した場合は対象外です。傷害補償の対象は、塾に通う生徒のみになります。
個人情報漏洩補償
個人情報漏洩補償はその名の通り、個人情報が漏えいした際に補償することです。
学習塾は個人を特定できる「氏名」「住所」などの個人情報のほか、「成績」「志望校」「家庭環境」などのセンシティブな情報を扱います。それらが漏えいすると1件あたりの損害額が大きくなりやすいため、個人情報漏洩保険の加入が増加しています。
たとえば生徒の名簿データが流出した場合の見舞金や、なんらかのウイルスによりデータ漏えいした場合の原因調査費用などが補償対象です。
設備補償
学習塾の建物や備品が、火災・自然災害・水漏れなどの事故によって壊れたり使えなくなった際の、修理費や購入費の補償です。
補償対象は、机や椅子、パソコンやコピー機に加え、教材や本棚、看板や冷暖房器具まで、塾運営に使う設備のほとんどがカバーされます。事故だけでなく窃盗など事件性のある被害も補償対象です。
塾の保険で補償される3つの賠償責任
塾の保険で補償される賠償責任は塾の経営者と塾に通う生徒、生徒の傷害事故の3つです。
塾の経営者の賠償責任
塾の経営者の賠償責任は、塾の経営者や役員などが法律における賠償責任を負った場合、保険金が支払われる制度です。塾の経営者が生徒や第3者にケガを負わせる、もしくは死亡させてしまったことに対して保険が適用になります。
財物が損壊した場合も補償の対象です。生徒の進路や学校成績などへの発言が、名誉やプライバシーを侵害した場合、保険金の支払いの対象になる可能性があります。
塾の生徒の賠償責任
塾の生徒の賠償責任は、塾の生徒や生徒の法定監督義務者が負うものです。法定監督義務者は、生徒の親権者や未成年後見人などが対象です。
塾の管理下にある生徒が、他の生徒や第3者に対してケガを負わせたり、命に関わったりする事故を起こした際に、塾の生徒や法廷監督義務者に対して保険金が支払われます。塾の設備や他の生徒の器物、財物に損害を与えた場合も、保険金の支払いが適用されます。
塾の生徒の傷害事故
塾の管理下にある際や塾と自宅との往復で生徒が起こした傷害事故では、偶然の事故による死傷に対して保険金が支払われます。
ただし、通常の経路を逸脱した経路における傷害事故に対する補償には適用されません。制度における管理下とは、授業開始前や終了後に塾の施設内にいる間の出来事が含まれます。塾が主催もしくは共催する合宿や模擬試験なども対象となります。
塾の保険の種類と選び方
塾の保険(塾総合保険)は様々な保険会社が提供し、さらにその中でもコースごとに補償内容や保険料が大きく異なります。
基本構成
どの保険にも「塾の賠償責任補償」と「生徒の賠償責任および傷害補償」があります。異なるのは月々支払う保険料と、支払われる補償額です。
保険料が高い保険は何が違う?
保険料は安く抑えたいと思うかもしれませんが、出費を惜しまずプランを選んだ方が良い場合もあります。
たとえば高所得層が多いエリアでは、事故あった際に弁護士を立ててくる可能性が高いです。保険料が高額なプランであれば弁護士費用を補償してくれたり、示談代行を使える場合があります。
また、規模の大きな塾であれば治療費や見舞金を会社の経費で出すことも可能ですが、小規模な塾ではそうもいきません。特に自転車や徒歩通塾の生徒が多い場合は、見舞金・治療費補償のあるプランが良いでしょう。
保険料はどうやって決まる?
保険料は、主に平均生徒数または一定日における生徒数によって決定されます。また、多くの場合は生徒数が多いほど割引率が高くなります。
どんな特約がある?
保険における「特約」とは、上記のような基本構成のプランに任意で追加するオプション契約のことです。プランごとに、学習塾の様々なシチュエーションに合わせた特約があります。
以下は一例です。
| 特約 | 保険例 | 内容 |
|---|---|---|
| スクールバス・乗用車搭乗中の傷害保険 | J.J.A.総合保障制度 | スクールバスや乗用車に搭乗中の死傷を補償 |
| 訴訟対応費用担保特約条項 | 東京海上日動塾総合保険 | 被保険者が対象となる損害賠償訴訟の一部費用を補償 |
| 人格権侵害補償特約 | 三井住友海上塾総合保険 | プライバシーの侵害や名誉棄損などで被保険者が法律上の賠償責任を負った場合の補償 |
塾の保険料の仕組み
以下で、賠償責任補償や傷害補償に関する、塾の保険料の仕組みを解説します。
賠償責任補償
賠償責任補償は、以下6つの項目に対して保険金が支払われます。
- 損害賠償金:治療費や慰謝料などの費用
- 損害防止費用:塾の損害の発生、拡大の防止などの費用
- 緊急措置費用:被害者に対する応急処置や緊急の手当などの費用
- 協力費用:保険会社の対応にかかる費用
- 権利保全行使費用:損害賠償請求をする際の費用
- 争訟費用:保険会社が認証した訴訟や弁護士報酬などの費用
それぞれ自腹で払おうとすると数十万~数千万円かかる、非常に重い出費です。保険に入っていないと、事故が起こった際に上記の費用を支払う必要があるため注意しましょう。
傷害補償
傷害補償は、以下4つの項目に対して保険金が支払われます。
- 死亡保険金:事故発生日から当日までの180日以内に死亡が確認した時に支払われる費用
- 入院保険金:ケガや事故による入院でかかる費用
- 後遺障害保険金:事故発生日から当日までの180日以内に後遺障害に対する費用
- 通院保険金:事故やケガにより通院にかかる費用
上記で補償される費用は、偶然の事故に対するものです。故意に発生した事故は、補償が適用されない点に注意が必要です。
塾の保険で支払われる金額
塾の保険で支払われる保険金は、加入するプランによって金額が大きく異なります。以下は、中程度のレベルの塾の保険に加入していた場合に支払われる金額の相場です。
- 死亡保険金:100~200万円程度
- 入院保険金日額:1,500~3,000円程度
- 通院保険金日額:1,000~2,000円程度
- 入院中の手術:入院保険金日額の10倍
- 賠償事故:事故1件につき5,000万円~1億円程度
上記の金額は、生徒の数や生徒1人あたりの保険料によっても異なります。
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塾の保険に加入する際の注意点
保険の対象になる塾や教室は、以下の通りです。
- 学習塾
- 珠算教室
- 書道教室
- ピアノ教室
- 外国語教室
- 華道、茶道教室
- 絵画教室
スポーツ指導や小学生未満対象の乳幼児の指導、通信教育は、保険の対象外です。自動車教習所も保険の対象ではないため、保険の加入前に確認しておきましょう。
スポーツ塾が加入できる保険は?
スポーツ塾は「スポーツ安全保険」に加入できます。スポーツ安全保険とは、小さな掛金で大きな補償が得られる保険です。家族だけでの活動、プロのスポーツ選手による活動などを除いた団体が加入できます。営利活動を行う団体のスポーツ塾が加入できる保険には、傷害保険や賠償責任保険などもあります。
個人競技のスポーツ保険は単発で加入するものが多く、1日あたり500円程度の価格で保険の利用が可能です。
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まとめ
塾の保険は、万が一の事故に備えて必要なものです。塾の経営は、器物や設備の破損だけでなく、生徒同士のケンカや塾に通う際の事故などのトラブルが起こりえます。塾に通う途中にもトラブルが発生することもあるため、安全に配慮して保険の加入を検討しましょう。
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大場元騎(学習塾経営者)
経歴:東京都内にて学習塾2校の立ち上げ・経営
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