放課後等デイサービスを運営している方のなかには、「利用者はいるのになかなか利益が残らない」「人件費や物価が上がって経営が厳しくなっている」と感じている方もいるのではないでしょうか。
放課後等デイサービスは需要のある事業ですが、開業すれば安定して利益が出るとは限りません。 実際、厚生労働省の調査では、赤字となっている事業所も少なくないことが分かっています。
さらに2026年には、新規事業所を対象とした基本報酬の見直しも行われており、今後は利用者確保だけでなく、加算の取得や人員配置、業務効率化まで含めた経営管理がより重要になるでしょう。
この記事では、放課後等デイサービスの経営が厳しいといわれる理由や最新の経営状況、経営を安定させるためのポイントについて解説します。
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放課後等デイサービスの経営は本当に厳しい?
結論からいうと、放課後等デイサービス全体が赤字というわけではありませんが、経営が厳しい事業所は決して少なくありません。
厚生労働省の「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」によると、放課後等デイサービスの収支差率は次のようになっています。
| 決算年度 | 収支差率 |
|---|---|
| 令和5年度 | 7.9% |
| 令和6年度 | 9.1% |
収支差率とは、簡単にいえば事業収入に対してどの程度利益が残っているかを示す割合です。令和6年度決算では9.1%となっているため、平均だけを見ると「それほど厳しくないのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、同じ調査を見ると状況は大きく異なります。
放課後等デイサービスの45.4%が赤字
令和6年度決算では、放課後等デイサービス事業所のうち、
- 赤字:45.4%
- 黒字:54.6%
となっています。つまり、およそ2事業所に1事業所が赤字です。令和5年度決算では赤字事業所が48.4%だったため改善はしていますが、依然として経営状況には事業所間で大きな差があります。
「平均収支差率9.1%なのに約45%が赤字」という数字は一見矛盾しているように見えますが、一部の利益率が高い事業所によって平均値が押し上げられていると考えると分かりやすいでしょう。
そのため、「放課後等デイサービスだから儲かる」「需要があるから安心」とは言い切れないのが実情です。
放課後等デイサービスの経営が厳しいといわれる理由
では、なぜ放課後等デイサービスでは経営が厳しくなるケースがあるのでしょうか。
主な原因を見ていきましょう。
事業所が増えて競争が激しくなっている
放課後等デイサービスの需要拡大に伴い、全国で事業所が増加してきました。
2026年度の報酬改定に関する厚生労働省の資料でも、放課後等デイサービスは過去3年間にわたって事業所数が5%以上増加しているサービスの一つとして挙げられています。
事業所の選択肢が増えれば、利用者や保護者は立地だけでなく、「どのような療育・支援を受けられるのか」「スタッフは信頼できるか」といった点まで比較するようになります。
特に事業所が多いエリアでは、単に開所して待っているだけでは利用者が集まりにくくなっていると考えたほうがよいでしょう。
人件費の負担が大きい
放課後等デイサービスでは、安全かつ適切な支援を提供するために一定の人員配置が必要です。
児童発達支援管理責任者をはじめ、児童指導員や保育士などを配置する必要があり、利用者数が少ないからといって簡単に人員を減らせるわけではありません。
さらに最低賃金の上昇や採用競争などによって、人件費だけでなく求人広告や人材紹介などの採用コストが増加する可能性もあります。
厚生労働省の報酬改定に関する議論でも、人件費や採用費の高騰などによって厳しい経営を強いられているとの意見が示されています。
利用者数によって売上が大きく変わる
放課後等デイサービスの収入は、基本的に利用者へサービスを提供した実績によって発生します。
そのため、定員10名の事業所でも、毎日10名近くが利用する事業所と5~6名程度しか利用しない事業所では売上に大きな差が生まれます。
一方、家賃や人件費、車両費、システム利用料などの固定費は、利用者が少なくても発生します。
したがって、一定以上の稼働率を継続的に確保できるかどうかが経営を左右する重要なポイントになります。
加算を十分に取得できていない
放課後等デイサービスの報酬は基本報酬だけでなく、さまざまな加算によって構成されています。
提供している支援や人員配置が加算要件を満たしていても、必要な届出をしていなかったり、記録が不足していたりすれば算定できません。
逆に、「売上を増やしたいから」という理由で要件を十分に確認せず加算を算定すれば、返還を求められる可能性があります。
重要なのは、取得できる加算を正しく把握し、支援内容・人員配置・記録をセットで管理することです。
送迎にかかるコストが大きい
放課後等デイサービスでは、学校や自宅への送迎を行っている事業所も多くあります。
送迎には車両本体だけでなく、
- ガソリン代
- 自動車保険
- 車検・整備費
- 駐車場代
- 送迎を担当する職員の人件費
などが発生します。
また、送迎範囲を広げすぎれば、職員が長時間送迎に取られ、施設内の人員配置にも影響します。利用者獲得のために送迎エリアを広げることが、必ずしも利益につながるとは限りません。
報酬制度の変更に対応する必要がある
放課後等デイサービスは公費によって支えられている事業であるため、制度や報酬改定の影響を受けます。
特に2026年6月からは、2026年6月1日以降に新規指定された放課後等デイサービスについて、原則として応急的な報酬単価が適用されています。
対象となる放課後等デイサービスでは、基本報酬が所定単位数の1,000分の982(98.2%)となります。つまり、従来の基本報酬から1.8%低い水準です。なお、既存事業所は原則として従来どおりで、重度障害児等を受け入れる場合やサービス不足地域などには配慮措置があります。
既存事業所を運営している場合に直接基本報酬が1.8%下がるわけではありませんが、今後新店舗を開設する場合などには収支計画へ織り込む必要があります。
経営が厳しくなりやすい放課後等デイサービスの特徴
赤字になる原因は一つではなく、複数の問題が重なっているケースが一般的です。特に次のような状況には注意が必要です。
商圏の需要を十分に調べず開業している
「放課後等デイサービスの利用者は増えているから大丈夫」と考え、地域ごとの需要を十分に確認しないまま開業すると、利用者獲得に苦戦する可能性があります。
実際、厚生労働省の検討会では、自治体から「ニーズ調査をしないまま事業者が参入し、開設後に利用者を募集しているケースが見られる」といった意見も示されています。
開業前には、対象となる子どもの人口だけではなく、既存事業所の数や空き状況、学校・相談支援事業所との位置関係なども確認しておく必要があります。
他の事業所との違いが分かりにくい
近隣に複数の放課後等デイサービスがある場合、「どこでも同じ」に見えてしまうと選んでもらう理由がありません。
たとえば、運動療育、学習支援、SST、専門職による支援、不登校支援、就労を見据えた支援など、どのような子どもに対してどのような価値を提供する施設なのかを明確にすることが重要です。
ただし、経営上の差別化だけを優先するのではなく、地域のニーズと子ども本人に必要な支援を踏まえてサービス内容を考える必要があります。
利用状況や収支を数字で把握していない
月末になって売上だけを見るのでは、経営上の問題を発見するのが遅くなります。
たとえば、
「曜日別の稼働率」
「利用者1人あたりの売上」
「キャンセル率」
「人件費率」
「加算別の算定状況」
などを定期的に確認すると、どこに改善余地があるのか把握しやすくなります。
「なんとなく最近利用者が少ない」という感覚ではなく、数字で経営状況を把握する仕組みをつくることが大切です。
職員が定着せず採用を繰り返している
放課後等デイサービスでは、人材不足がそのまま経営リスクにつながります。
退職者が出るたびに求人媒体への掲載や人材紹介を利用していれば、採用費が膨らみます。また、残った職員への負担が増え、さらに離職が起こる悪循環に陥るケースもあります。
給与だけでなく、休暇の取りやすさや業務分担、情報共有の方法、記録業務の負担なども見直し、職員が長く働ける環境を整えることが結果的に経営安定にもつながります。
放課後等デイサービスの経営を改善するには?
ここからは、現在の経営状況を改善するために確認したいポイントを紹介します。
稼働率を曜日ごとに確認する
まず確認したいのが利用状況です。
月全体の利用者数だけを見るのではなく、月曜日から土曜日まで曜日別に利用率を見ると、「水曜日は定員に近いが金曜日は半分しか埋まっていない」といった課題が見つかります。
空きがある曜日を把握できれば、相談支援事業所や保護者へ空き状況を案内する際にも活用できます。
また、利用希望が集中している曜日と人員配置を照らし合わせることで、シフトの最適化にもつながります。
地域の関係機関との連携を強化する
放課後等デイサービスではWeb広告だけで利用者を集めるのではなく、地域とのつながりが重要です。
相談支援事業所や学校、医療機関、児童発達支援事業所などに、「どのような子どもを支援しているのか」「現在どの曜日に空きがあるのか」「どのような専門職が在籍しているのか」などを分かりやすく伝えておくと、施設を必要としている家庭につながりやすくなります。
算定できる加算を定期的に確認する
人員配置や支援内容が変化すれば、新たに算定できる加算が生まれる場合があります。反対に、職員の退職などによって要件を満たさなくなっている可能性もあります。
そのため、年度初めだけ確認するのではなく、人員変更や制度改正のタイミングで加算の算定状況を見直すことが大切です。
特に制度改正後は、こども家庭庁などが公表する最新の通知やQ&Aを確認しましょう。令和8年度報酬改定についても、こども家庭庁が改定内容やQ&Aを公開しています。
不要なコストを洗い出す
単純な人員削減は支援の質や職員の負担に影響するため、コスト削減ではまず固定費や業務フローを確認しましょう。
たとえば、ほとんど使われていないサービスの契約、過剰な広告費、非効率な送迎ルート、紙や郵送を前提とした事務作業などです。
毎月数千円~数万円程度でも、年間で考えると大きな差になります。
事務作業を効率化する
経営改善というと利用者を増やすことに目が向きがちですが、既存職員が支援以外の業務にどれだけ時間を使っているかも確認してみましょう。
保護者への連絡、出欠確認、入退室記録、電話対応、紙からパソコンへの転記などが多ければ、ICT化によって負担を軽減できる可能性があります。
特に人手不足の施設では、新たに人を採用するだけでなく「現在の職員が少ない負担で働ける仕組み」をつくることも重要です。
経営改善では「支援の質」を下げないことが重要
利益を確保するためとはいえ、職員数を必要以上に減らしたり、子どもに必要な支援まで削ったりするのは適切ではありません。
放課後等デイサービスは単なる「放課後の預かり場所」ではなく、子どもの発達や生活、社会参加などを支援する役割を担っています。
こども家庭庁が公表している放課後等デイサービスガイドラインでも、本人支援だけでなく、家族支援、移行支援、地域支援・地域連携などを含めて支援を行う考え方が示されています。
そのため経営改善では、支援そのものを減らすのではなく、支援以外の非効率な作業やコストを減らしていく視点が重要です。
ICT化で職員の負担を減らし保護者満足度を上げる
放課後等デイサービスでは、子どもへの支援だけでなく、保護者との情報共有や日々の入退室管理も重要な業務です。
こうした業務をデジタル化することで、職員の負担を減らしながら、保護者にとっても「子どもの様子がわかる」「施設に到着したことを確認できる」といった安心につなげられます。
ビヨンド連絡帳

「ビヨンド連絡帳」は、施設と保護者の連絡をデジタル化できる連絡帳システムです。
日々の子どもの様子や連絡事項をオンラインで共有できるため、紙の連絡帳を準備・管理する手間を減らせます。また、保護者側もスマートフォンなどから内容を確認でき、時間や場所を問わず施設からの連絡を受け取れます。
放課後等デイサービスにおいて、保護者との情報共有をスムーズにしながら、職員の連絡業務を効率化したい場合におすすめです。
ビヨンド入退くん

「ビヨンド入退くん」は、子どもの入室・退室を記録し、保護者へ通知できる入退室管理システムです。
「施設に無事到着したか」「いつ退室したか」を保護者が確認できるため、送迎や帰宅時の安心につながります。職員にとっても、電話で行っていた入退室確認をデジタル化することで、記録や確認作業の負担軽減が期待できます。
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