「リスキリング」という言葉が一般的になり、出社を必要としないリモートワークも新型コロナウイルスの流行を経て浸透してきました。
そんななか、自宅では勉強や作業に集中できず、家でも塾でもカフェでもない「自習室」の需要が増えています。
今回は有料自習室の経営に関する完全ガイドと称し、開業前に必要なことを網羅的に解説していきます。
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有料自習室とは
有料自習室とは、月額または都度料金を支払った顧客に、自習や作業に最適な空間を提供する施設です。
受験やテストの勉強をする学生から、資格取得に向けた勉強や起業準備をする社会人まで、幅広い層が活用しています。
電子書籍や低価格な勉強アプリが普及した現代において、「自学自習できる人」にとって塾やスクールはコスパが悪いという見方もされており、自習室の需要が高まっているのです。
有料自習室のメリット(経営者視点)
経営者から見た有料自習室の良いところは、開業してしまえば経営者自身の業務は少なく済む点にあります。0から物件を借りなくとも、個人営業カフェの閑散時間を借りる、土日に出勤がない企業のオフィスを借りるなど、工夫次第でより低資金で始めることも可能です。
人件費や在庫リスクも少ないため、ランニングコストも他の事業と比較しても多くはありません。
有料自習室のメリット(利用者視点)
図書館や自宅なら無料で自習ができるし、自習室でなくてもカフェなどで作業することは可能です。しかし、有料とはいえ「自習室」に特化した施設ならではの強みがあります。
以下は他の一般的な作業場所のデメリットです。
自習場所 | デメリット | 自習室の強み |
---|---|---|
自宅 | 娯楽の誘惑が多い、家族の介入がある | 自習するための設備のみ |
塾 | 基本的に講義の受講前提なので高額、短期講習などの勧誘がある | 自習だけの料金でOK |
図書館 | 席が埋まりがち、早朝や夜は閉まっている | 深夜の営業や24時間営業が多い |
カフェ | 話し声がうるさい、長居すると注意を受ける可能性がある (そもそも自習をする場所ではない) | 会話は原則禁止、自習目的の顧客のみ |
これらのデメリットを考慮すると、「自習のためだけに利用できる場所」に需要があるのも理解できるのではないでしょうか。
有料自習室は稼げる?
有料自習室は高額な設備や人件費を要するビジネスではないため、経費はかかりにくいです。ただ、客単価もあまり高くないため、「大きく稼げるビジネス」とは言い難いのも事実。
一方で、学習塾のように人員や在庫の管理も必要なく、集客が上手くいけば安定的に収入が入ってくるため、「副収入がほしい」「あまり手のかからない事業をしたい」という方には向いています。
また、大きく稼げるビジネスではないからこそ、大手企業の参入も考えづらく、比較的低リスクで安定的な経営が可能なビジネスだと言えるでしょう。
有料自習室の初期費用(開業資金)は?
規模によりますが、オフィスビルの一室に大きな机を置き、パーテーションで区切るような小規模の自習室であれば、150万~200万円程度あれば開業可能です。
物件取得費 (保証金+敷金+礼金) | 約100~150万円 ※家賃15万円の場合: 保証金半年90万円+敷金・礼金45万円 →135万円 |
設備費 (机、椅子、パーテーション、Wi-fiなど) | 10~30万円 |
セキュリティ関連 (入退室管理システム、防犯カメラなど) | 5~10万円 |
休憩スペース (コーヒーメーカー、机、ソファ、本など) | 1~10万円 |
水道光熱費 | 2~3万円 |
なお、開業の際は開業資金のほかに、3か月~半年ほどの運営資金も用意しておくと安心です。
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開業資金の調達方法
開業資金の調達は、低金利の日本政策金融公庫や、地域ごとの小規模事業者向けの補助金を活用しましょう。
初期費用を抑えるポイント
初期費用を抑えるためには、まず金額が大きくなりがちな家賃からしっかり考えましょう。家賃が高い場所は人も集まりやすい傾向にありますが、必ずしも自習室の需要があるとは限りません。さらに家賃が安くても、敷金・礼金や仲介手数料が高額な可能性もあるため、しっかり確認しましょう。
物件を0から探さずとも、例えばオフィスの使われていない会議室を利用する方法もあります。リモートワーク化が進み、業務スペースは減ったけどオフィスを手放すとなると様々な課題が生じる…という悩みを抱えている企業も少なくありません。
また、備品やシステムなども、低価格で必要最低限なものを導入することでランニングコストを抑えることができます。特にシステムは大企業が導入するようなものではなく、少人数で安価に導入できるものを選ぶことで、大幅なコスト削減に繋がります。
自習室の経営を成功させるために必要なこと
自習室経営の成功において重要なことを、5つに分けて解説していきます。
立地・物件の選定
立地や物件選びは、自習室経営の収益を大きく左右するポイントです。
たとえば、都心の主要駅近くと郊外の住宅街では、同じ広さの物件でも家賃が数万円変わります。これは、同じ料金設定で同じ人数を集めても、利益に大きな差が出てしまうということです。
また、高額な物件だからといって集客しやすいわけでもありません。しっかりとターゲットと立地の調査(自習室の需要や競合の有無を含む)を行い、利益を最大化できる物件を選びましょう。
料金・プラン設計
立地・物件の次に利益を左右するのが料金設計です。低価格にすれば新規顧客は集まるかもしれませんが、低価格だと利益が出にくくなります。そればかりか質の低い顧客が集まりやすくなり、真面目に勉強したい顧客の解約に繋がりかねません。
以下の相場を参考に、近隣の競合店舗の料金も加味しつつ料金を考えましょう。
プラン | 料金相場 |
---|---|
有人営業+指定席 | 3万~3.5万円/月 |
有人営業+自由席 | 1.5万~2万円/月 |
無人営業+指定席 | 1.5万~2万円/月 |
無人営業+自由席 | 1万~1.5万円/月 |
ビジター(1回利用) | 300~1000円/日 |
平日限定 | 5000~1万円/月 |
日中限定・夜間限定 | 5000~1万円/月 |
競合との差別化
近隣の自習室のサービスや料金・プラン設計と比較したときに、「この自習室が良さそう」と思ってもらえる差別化ポイントが必要になります。
競合との差別化の例を挙げたので、参考にしてみてください。
- ラグジュアリーな休憩室
- 有料ロッカーなどの便利なオプション
- 文房具や充電器などのレンタル
- 掃除の徹底
- 女性専用
- 審査制、招待制
ここでいう「競合」とは、必ずしも「有料自習室」とは限りません。比較対象となる「自宅」や「カフェ」に対し、どれだけコスパの良さを感じてもらえるかも重要です。
効果的な集客
立地や料金プランが適切でも、「この場所にこんな自習室がある」ということを周知できなければ経営は上手くいきません。
SEO、MEO、SNS、集客メディア、チラシ…。様々な集客手法の中から、ターゲットや地域に合ったものを選びましょう。もし集客知識や集客予算がない場合は、最低限以下の準備をしておくことをお勧めします。
集客方法 | 備考 | 料金 |
---|---|---|
Google ビジネスプロフィールに登録 | Google mapに情報を掲載し、近隣で探してる人に訴求できる | 無料 |
インスタグラムアカウントの開設 | HP制作の予算がない場合にHPの代わりになる | 無料 |
ポータルサイトへの掲載 | サイト内のみで探している人にも訴求できる。 「自習室.com」がおすすめ。 | 無料(自習室.comの場合) |
集客方法については、学習塾の集客方法も参考にしてみてください。
過不足のない備品・システム
自習室の経営を成功させるには、新規顧客の獲得だけではなく解約されないこともマストです。自習室経営において継続率を上げるには、奇抜なサービスで目立つよりも不満を募らせないことが求められます。
最低限の備品やシステムを導入して、「自習室」として最適な環境を提供しましょう。
以下を参考に、どのような備品やシステムが必要か、予算を加味して検討してみてください。
求められること | 備品・システム例 |
---|---|
安心できる環境 | 防犯カメラ、入退室管理システム、予約システム、鍵付きロッカー、消毒液、空気清浄機、女性専用エリア |
集中できる環境 | パーテーション、机同士を仕切るカーテン、照明 |
快適な環境 | 消臭剤、加湿器、エアコン、ブランケット |
様々な作業に合う環境 | コンセントタップ、無線LAN、充電器、サイレントタイプの電卓、鉛筆削り器、コピー機 |
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自習室の経営に必須なのが、顧客の入退室を管理するシステム。
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- 混雑状況の閲覧
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- 利用者の家族へ入退室をLINE通知
- 従業員のタイムカード・勤怠管理
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まとめ
有料自習室は「大きく稼げる」というわけではないものの、少ない資金・労力で安定的に稼ぐことが可能なビジネスです。
「新規顧客の獲得→継続率の向上」を意識し、自習室の経営を成功させましょう。
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